暁 〜小説投稿サイト〜
ヴァレンタインから一週間
第22話 玄辰水星登場
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ずですから、俺に出会う直前までの彼女に関してならば再構成は可能なはずです。そして、その観点から、彼女は自らの死を恐れていない、……と言う可能性は有ります。
 ただ、それならば、彼女が俺の死を自らの友の喪失と捉えるように、俺が、俺と同じ時を共に過ごした彼女の消失を、彼女の死だと考えて居る事は簡単に理解出来るはずなのですが。



 そんな、少し思考の海に沈み掛かった俺を、真っ直ぐに見つめ続ける有希。その瞳に宿るのは、僅かな逡巡。
 う〜む。どうもよく判りませんが、何か聞きたい事が有るような雰囲気なのですが……。

「何か、まだ聞きたい事が有るのか?」

 俺の問い掛けに対して、それでも視線を外そうとせずに見つめ続ける有希。
 その二人の間をゆっくりと過ぎて行く時間。

 やがて、澄んだ湖面の如きその瞳に僅かな(さざなみ)を感じさせた後、諦めたかのように小さく二度、首を横に振る彼女。
 しかし、

「上手く言語化出来ない」

 ……と、その仕草の後に続けた。
 う〜む。何となく、意味が通じるような、通じないような微妙なニュアンスですが、おそらく、俺が疑問に思って居る事と、そう違わない内容に関する事だと思いますね。
 今、彼女が感じて居るモノの正体は。

 それならば、

「そう言えば、ひとつ言い忘れていた事が有ったな」

 何か伝えたい事、聞きたい事が上手く表現出来ずに、もどかしい。少し不満げな気を発して居る彼女に対して、そう話し掛ける俺。
 そのような俺の問い掛けに対して、言葉にしての答えは返って来る事は有りませんでしたが、俺の顔を彼女が見つめてくれたので、これは俺の話を聞く準備は出来ていると言う事でしょう。

「さっきの言葉。ありがとうな」

 突然の感謝の言葉。そして、彼女が何か反応を示すその前に更に、

「さっきの言葉。そして、水晶宮での言葉。俺が羅?(ラゴウ)星を捕らえると言った時の有希の言葉も同じ心から発した言葉だったと思う」

 ……と、続けた。

 最初は俺が何を話し出したのか判らず、疑問符の浮かぶ雰囲気を発していた彼女でしたが、そこまで告げた瞬間に俺の意図に気付いた有希。
 そして、ほんの少し、微かに首肯いて答えてくれました。

 そう。それに、どちらも俺の身を案じての言葉だった事は間違い有りませんから。

 おそらく、彼女は俺の死亡と言う言葉を、俺の寿命が尽きるはるか未来の話などではなく、羅?(ラゴウ)星との戦いの際に、俺が、俺の一命を以て羅?(ラゴウ)星を封じる、と言うより簡単な選択肢の方を選ぶ為の布石だと懸念したのでしょう。
 そう考えると、確かに先ほどの俺の言葉はウカツな言葉で有り、そして、多少、考えの足りない言葉だったように思いますから。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ