暁 〜小説投稿サイト〜
おいでませ魍魎盒飯店
Episode 4 根菜戦争
最悪のモーニングコール
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ちろん、久しぶりに顔を見に……」
「……死にたいようだな、"妖樹王"ユストゥス・エルケーニッヒ・シュヴァルツマイヤー閣下」
 キシリアの声が地獄の床を踏み抜かんばかりに低く流れる。

 ――あれ? その名前、どこかで聞いたような?
 まだ魔界に来て日の浅いカリーナたちはなじみの無いことだが、その呟かれた名は隣国の王の名前だった。

「やだー サクラって呼んでよぉ。 いつもみたいにぃ。 数少ない同郷なんだから!」
 キシリアを桐生と呼び、そして自らを同郷の出身と告げるこの美丈夫のかつての名前は、御木本 桜。
 そう、キシリアと同じく数少ない日本からの転生者であった。

「あーもぉ、睨まないでよ。 だってぇー 桐生さん、めったに顔見せてくれないしぃ」
「俺がよほどのことが無い限り国境を越えられんのは知っているだろう? 主にウチの国の魔王のせいで」
 実はキシリアの店は国境まで歩いて3分と言う恐ろしい立地条件であり、店の背後にある鬱蒼たる森は全て隣の国に属している。
 そして、その緑の王国を統べる魔王こそが、今目の前にいる美丈夫その人であった。

「だったら、この場所も森に飲み込んでアタシの国に組み込んであげるわよ。 これでいつでも会えるようになるしぃ」
「……戦争でも起こす気か?」
 "妖樹王"ユストゥスの目に剣呑な輝きを見て取ったキシリアがピンと片方の眉をあげる。

「ひょっとしなくてもなるでしょうね。 あれだけ舐めた真似されたらさすがに黙っちゃいられないわよ」
 微笑むユストゥスだが、その目は全く笑っていない。

「茶でも入れよう。 何がいい?」
「焙じ茶。 ウチの国でつくっても日本の味にならないのよね。 やっぱり桐生さんの淹れてくれたのじゃないと」
「……キシリアと呼べ。 あと、相変わらず贅沢な舌だな」
「そりゃもぅ、王様ですから」
 キシリアが先導して部屋を出てゆくと、その後ろをユストゥスが自宅でもあるがごとくヒョイヒョイと付いてゆく。

「なぁ、俺たちってものすごーくヤバい場面に遭遇してないか?」
「……たぶんそうだと思う」
 軽口を叩き合いながらリビングに消えてゆく二人を見送り、クリストハルトとカリーナはウンザリしたようにため息を吐き出した。
 魔王に匹敵する理力を持つキシリアと、隣の国の魔王が顔を付き合わせて何か相談をしているのだ。
 いったいどんな恐ろしいことが起きているのやら……

 ――その数分後、アトリエ・ガストロノミーの店舗全体を震わすように、キシリアの怒りの声が響き渡った。



 ドライアドがキシリアの店を訪ねる。
 目的はレンズ豆が出来たことの報告と、オーク対策の相談。
 原因は、キシリアが始めた料理と言う文化により、食生活の美食化が発生。
 オーク
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