Episode 4 根菜戦争
最悪のモーニングコール
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うな甘ったるい口調に見えるかも知れないが、実際にはかなり野太い声である。
しかも、キシリアを"桐生さん"と呼ぶあたり、ただの魔族であるはずがない。
その名は、当然ながら今のキシリアの名前ではなく、彼女の前世の名前だからだ。
少なくとも、キシリアが"この世界"の存在にその名を明かすことはないし、当然ながらキシリアが名乗らない限りはこの世界の住人がその名を知るはずも無い。
「とりあえず人化だ、人化! その図体でウチにこられても入る場所なんかねぇぞ!!」
「えー だって、私一人じゃ人化できないしぃ」
そんな台詞と共に、エルケーニッヒの巨体がギシギシと不気味な軋み音を立てる。
実際には、まるでドラゴンが歯軋りでもしているような轟音であり、キシリアの後ろに控えているクリストハルトとカリーナは恐怖のあまり顔が真っ青になっていた。
いきなりこんなものが現れれば、彼等の反応も無理は無いだろう。
すでにカリーナの目には山をも焼き尽くす神火の輝きがチラチラと揺れている。
「キモいわボケ! 元がJKだからって可愛いフリをしても、男なんだよ! 今のお前は!!」
「ひどーい! 私は今でも乙女のつもりなのにぃっ!!」
「ナメたこと抜かすと、カリーナに命じてお前の体半分焼くぞ!」
その言葉に、さしものエルケーニッヒもたじろいだ。
いくら"榛の魔王"といえども、カリーナの持つ火神"太陽の嗣子"の炎に灼かれれば命を失いかねない。
「もー わかったから力貸してよ。 本気で一人じゃ人の姿とれないんだから」
「この、未熟者め」
「ひどーい! これでも、この世界では私のほうが先輩なんですからねっ!!」
「寝言は寝てから言え。 ……カリーナ、クリストハルト、まぶしいから少し目を閉じていろ」
巨大な樹木からその枝先がおそるおそる差し伸べられ、まだ若葉が生い茂るその枝にキシリアが触れた瞬間、サッと周囲に銀色の光が放たれ、一瞬だけその場にいた者の全ての視界を奪う。
「あー 体が軽いわぁ」
そんな間延びした声にカリーナとクリストハルトが薄目を開けば、キシリアの隣にいつのまにか銀色の髪をした美丈夫が立っていた。
髪も銀色ならば、肌も白く、その衣装も霧を紡いで作られたような銀と薄灰色のローブ。
貴公子然とした涼しげな目鼻立ちではあるが、その背丈は大柄なクリストハルトと並んでも遜色が無く、肩幅の広さや胸板の厚さが男性らしさを否応にも主張している。
何も言われなければ、どこかの騎士か貴族がお忍びでやってきたのだと誰もが思うだろう。
ただ……その言葉遣いだけは、まるで街娘のようであった。
「で? 朝っぱらから何の用だ? まさか俺の顔を見に来たなんていわんだろうな?」
「も
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