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夢遊病の女
第二幕その三
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第二幕その三

「それは本当に」
「君は僕から全てを奪った」
 だがエルヴィーノはこう言うのだった。
「そんな君がどうして」
「私は潔白よ」
 それは確かに言うのだった。
「それは誓います。私には何の罪もないわ」
「嘘だ」
 だがエルヴィーノはその言葉を信じようとはしなかった。
「そんな筈がない、決して」
「どうして信じようとしないの?」
「ではどうして今朝あそこにいたんだ?」
 そのことを問い詰めるのだった。
「何故だ、それは」
「それは・・・・・・」
「言えないな。それが何よりの証拠だ」
 まさにそうだというのである。
「そういうことだ」
「いえ、それでも」
 まだ言おうとする。だがエルヴィーノは去ろうとするのだった。
 しかしここで。遠くから声がしてきた。
「伯爵様、それは本当ですか?」
「まことですか?」
「伯爵様?」
 エルヴィーノはその言葉に足を止めた。
「あの人が」
「どうかここにいて」
「御願いよ」
 アミーナだけでなくテレサも言うのだった。
「エルヴィーノ、そして私の言葉を聞いて」
「私からも」
「いや、僕は」
 エルヴィーノは二人の言葉を振り切ろうとする。だがその彼のところに村人達が来てであった。そうして彼に対して言うのであった。
「エルヴィーノ、いいか?」
「いい知らせだよ」
「いい知らせ?」
「そう、いい知らせだよ」
「聞くといい」
 こう彼に告げる。そうしてだった。
「伯爵様が仰って下さったんだよ」
「あの方が?」
「そう、アミーナは潔白だってね」
「それは間違いないと」
 そうだというのである。
「だからだ。もうアミーナを許していいんだよ」
「わかったな」
「君達には幸せになれるんだよ」
「いや」
 しかしであった。彼はまだこう言うのだった。
「僕は信じない」
「おい、伯爵様が仰ったのにか?」
「それでもなのか?」
「僕は自分の目で見たものしか信じない」 
 こう言うのである。
「決して。だから」
「エルヴィーノ・・・・・・」
「これを返そう」
 今度は自分の指輪を取ったのだった。左手の薬指のその指輪をだ。
 そうして再び。彼女に対して告げた。
「これが何よりの証だ」
「そんな、その指輪は」
「ちょっと待ってくれエルヴィーノ」
「それはあんまりじゃないのかい?」
「そうよ」
 村人達はここで彼に対して怪訝な顔で言った。
「伯爵様が折角仰ってくれたのに」
「それでどうしてなんだ?」
「一体」
「けれど捨てられない」
 エルヴィーノは俯いて呟いた。
「君を消し去ることができない」
「エルヴィーノ・・・・・・」
「伯爵様が仰ってもだ」
 まだ言う彼だった。
「それでもだ。今は」

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