妖精の国
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てる。普通は、そういう下りの場合は小指を立てるところだろうが。しかも、それでは私に死ねと言ってるぞ。実に海賊らしいが、海賊女王だけではなく私の友人らしさを出す事を忘れるなよ。歴史再現に引っ掛かるぞ」
「そんな事を言って面白がっている女の言う事を聞くほど、素直じゃなくてね」
ククク、と楽しげに笑っている姿を見てこりゃ、かなりの上機嫌だね、と思う。
はてさて何がこの女王の笑いのツボになったのかと思うが、最近で変わったことは起きてもいないし、してもいないはずなので無いと思うのだがもしかして、女王の所のシルバー一郎が女王の膝の上にでも乗って甘えたのだろうか。
どうでもいいが、そのネーミングセンスは英語弁か極東弁かどちらを主軸にしたのだろうか。
だがやはり、このご機嫌……というよりは楽しんでいる雰囲気には心当たりはない。最近何かあったとしたらそれこそ武蔵か、もしくはさっきの剣神の話題くらいである。
考えても結論は出ないかと思い、素直に口を開く。
「何か楽しみでもあるのかい?」
「Tes.───知ってみたい……いや、ご教授してもらいたい事柄が一つあってな」
一歩、女王が歩き出し二歩、三歩と進み、そしてそのまま歩みは連続する。
その歩みの迷わさに、何時も通りという単語を思い浮かべつつ何を、と問う。
その問いを歩くことで頷く代わりとし話すために空気を肺に入れる。
「疾走……その言葉がただの現実逃避なだけではないのかということだ。後ろを振り返らずに前だけを見る……言葉面だけを見れば素晴らしいが、それは今を見ていないということではないか、と」
そして
「それは過去から逃げているだけではないのか、とな」
グレイスは女王の言葉に一瞬停止した。
ただ、自分が彼女のどの言葉に反応して止まったのか理解出来ずに、思わず停止した体を振り切って視線だけ女王の方に目を向けるが既に背は小さい。
既にこちらから問う権利を失ってしまったと思った。
故に声を放つのは妖精女王のみであった。
「ああ、楽しみだ……どんな事でも知るというのは実に面白い。不謹慎だが、武蔵は私への良いサプライズだ」
その小さな背中に何となしに何かを言った方がいいと思ったが
「───」
止めた。
それは海賊女王の役割ではないだろう。
だからまぁ、余計な一言のみで十分だろうと思い、聞こえるかどうかは無視して口を開く。
「まぁ、がんばんな」
そして女王とは逆の方向に背を向ける。
背の方から微笑の気配がしたので最後に溜息をつけるサーヴィスをして、そのまま去った。
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