妖精の国
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るのかもしれない。けど熱田の剣神の場合は違う。彼は暴風神の神に認められたんだ───風は移ろい、流れる。束縛するなんて出来やしない。つまり熱田の剣神は神になっても別に何の制約もあるはずがなかったんだ」
「神になるのが気に入らなかったって言うのは?」
「グレイスらしい話だけど、確かに一番有力かもしれないね。人から神……いや、違う存在になる事の忌避感。当事者になってない僕が語るのもどうかと思うけど、可能性の一つとして拒否感が生まれるかもしれない」
人でないものに成る。
文で書けば、この程度なのだがこの文から発生する感情はやはり、人によって変わるだろう。
歓喜する者もいるだろう。
恐怖する者もいるだろう。
悲観する者もいるだろう。
嫌悪する者もいるだろう。
どれが正解であるなどと論じるのは作家の仕事ではないが、仕事ではない故に何も語らない。
だから結論を言おう、と。
「結局、人でもなければ神にもならないという中途半端な者に成る事を決めた。極東の最大にして最初期の英雄の神に認められた存在はその道を選んだ。そしてそれが一番愉快な事だね───分るかい?」
この問いに二人は苦笑で先を進めるように促す。
作家の言葉が聞きたいと。
作家は言葉じゃなくて文字で語る職業なんだけどな、と内心で苦笑しながら
「この中途半端を───神は認めたんだよ。その生き方を良しと。その生き方は面白いって。ユーモラスを理解していたのか、それとも気紛れか」
その下りに妖精女王が口を微笑の形に歪めて口を開いた。
「お前はどっちだと思いたいんだ? シェイクスピア。英国の文化の象徴の一人よ───私が笑えるような答えをくれよ?」
「Tes. ───当然、僕が面白いと思える答えを選ぶに決まっているだろう。作家らしく面白いほうをね」
ははっ、と女王が笑ってくれたので客を笑かすことは出来ただろう。
ともあれ自分の感想はここまでだ。
作家の感想をどう捉えるかは、後は見てくれた人の自由だ。
「立ち話にしては長い話になってしまったね……僕はそろそろ部屋に戻るよ。書きたい事があるしね」
「Tea.引きとめて済まなかったな」
別に、の一言で去っていく作家の背中をグレイスを消えていくまで見て、そして改めて妖精女王の方に視線を向ける。
「アンタもそろそろやらなきゃいけない事があるんじゃないかい?」
「……Tes.私もそろそろ行くとしよう。有意義な休憩だった」
そう言い、離れようとする背中に挨拶代わりの台詞のつもりで今回の話し合いで思ったことを話す。
「それにしても女王。誤解かもしれないけど、剣神に対して興味を覚えているようだな───これか?」
「おいおい、グレイス。何故そこで中指を立
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