第百二十五話 独眼龍の上洛その十三
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あらためて市を見てそして言った。
「御主への言葉でもあるな」
「浅井の家に入りそうして」
「離れるなという意味か」
長政は言った。
「深いな」
「そうですね。そこまでとは」
「では市」
長政はあらためて市に問うた。
「御主もこの服を着るな」
「はい」
返事はすぐに出た。
「そうさせてもらいます」
「ではな。着るのじゃ」
「是非共」
「そしてわしにはこれもか」
長政は刀を見た、その刀はというと。
「これだけ見事なものはな」
「ありませぬか」
「とてもじゃ」
そこまでのものというのだ。
「虎徹というらしいが」
「虎徹ですか」
「これはよい」
またこう言う。
「槍もな」
「見事な槍と」
「ここまでの槍は見たことがない」
長政は実際にその槍を手に取りその刃を見て言う。
「実にな」
「そうですか」
「この槍もまた義兄上のお心か」
「兄上のですか」
「この槍で共に戦おうというのか」
贈りものに信長からの心を見たのだ、そしてだった。
長政はお市に顔を向けてあらためて言った。
「ではわしはこれからもだ」
「兄上と共にですね」
「そなたともな」
信長の妹である己の妻へも言ったのである。
「共にいようぞ」
「殿は決して嘘を申さぬ方ですし」
「戦国の世でこう言うのも何だが嘘は苦手だ」
長政の特徴の一つだ、彼は律儀者でありさらに義を大事にする、それで嘘は言えないのである。
「実は越後の上杉殿に敬意を感じる」
「あの軍神と言われる」
「わしがあの方と戦えば負けるがな」
勝てないというのだ。
「だがそれでもだ」
「あの方の様にですか」
「なりたいとも思っている」
この考えも言うのだった。
「天下一統の為に」
「その槍で兄上と共に」
「天下泰平の為に進もうぞ」
長政は微笑んで己の妻に誓っていた、その誓いは確かであり誰も遮ることは出来なかった、だが浅井家は一つではない。このことが厄介なことであることに気付いている者は今は殆どいなかった。
竹中もこう信長に言うだけだった、織田家で随一の智の持ち主も。
「浅井殿も万全ですな」
「うむ、猿夜叉がおるからな」
信長も安心しきっている。
「あ奴はわしの考えを察してくれるし律義者じゃ」
「それ故にです」
「家臣の者達も分別がある。問題はないわ」
「朝倉家とのつながりは深いですが」
「何、朝倉が我等に従えばよい」
それでだというのだ。
「しかし従わぬまでのやり取りは浅井家にも見せる」
「それが浅井殿への説明ですな」
「その通りじゃ」
「ですな。先代の久政殿は特に騒がしい方ではありませぬし」
「隠居に徹しておられるな」
「では浅井殿には」
「何も問題はない」
信長も言い切る
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