第七話「△デート・鏡花前編」
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から遊ぶ。全力で遊ぶ。
心の底から楽しんで、彼に「幸せよ」と全身で伝えるために。
言葉にもするけど、素直に言うのは恥ずかしいから……。
――隣で変な音が聞こえた。でも蒼は気にしていない様子だし、いっか。
そんなことを頭の片隅で考えながら、あたしは全身で感じる風を切る感触を楽しんだ。
カーブに差し掛かる。強いGで流されそうになる体を安全器具がしっかりと守ってくれた。
「あぁぁぁぁ〜〜」
となりから遠ざかる間抜けな声があたしの鼓膜を叩いた。
見ると、蒼があさっての方向へ跳んでいく姿が。
「ええええぇぇ! ちょっ――蒼!? どこに行くのよあんたー!」
あたしの問いかけに答える暇もなく、蒼は放物線を描きながら蒼天の空を滑空した。
放り投げられた蒼の姿に気が付いた客が悲鳴にも似た声を上げている。それにつられて蒼の姿を目撃している人が増え始めた。
あと十秒もしないうちに蒼は硬い地面に叩きつけられることだろう。そうなれば一巻の終わりだ。……普通の人なら。
蒼のことを十二分に理解しているあたしは彼を心配する心なんて持ち合わせていない。
――だって蒼なんだし。
† † †
「あぁぁぁぁ〜〜」
放物線を描きながら空を飛ぶ俺。日差しがまぶしいぜ。
眼下の道行く人々が俺を指さし、なにやら騒いでいる。
遠くの方で警備員とともにここの関係者がやって来るのが見えた。
俺は猫のように体を丸めた。
――クルクルクルクル…………シュタッ!
十三回転の末、華麗に着地を決める。
踵が地面に接地すると同時に全身を屈伸したため、衝撃は限りなくゼロに近い。
思わず体操選手のようにビシッとポーズを決めた俺に「おぉ〜!」という感嘆の声と拍手が迎えた。
「いやー、どもども〜」
手を振りかえして拍手に応える俺の元に関係者の人たちが殺到してくる。支配人が血相を変えてやってきた。
「大丈夫ですか!? お怪我は!」
「見ての通り、ないよ」
「コースタに不具合が生じて機器が誤作動を起こしたようでした。大変申し訳ありませんッ!」
関係者がそろって低頭するなか、ジェットコースターの方から鏡花がやって来るのが見えた。
「蒼〜!」
「おお、鏡花」
手を振りかす。
「お連れの方ですね。このたびは大変申し訳ありませんでした。お詫びになるとは到底思え
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