第七話「△デート・鏡花前編」
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不吉な音に目を落とすと、座席とお客様を固定する装置が上がっているではありませんかー。
「……あーあー」
完全フリーになった俺。現在、ジェットコースタは直線を進んでいるめ振り落とされる心配はないが……。
――あ、次は急カーブだ。
待ち受ける結果に溜息が出そうになった。鏡花さんはジェットコースターに夢中で旦那さんに訪れているトラブルに気づいていない様子だし。
「なんだかなぁ」
そうこうしているうちに、問題のカーブが差し迫ってきた。鉄の箱舟は速度を落とすことなくカーブを曲がり――。
「あぁぁぁぁ〜〜」
慣性の法則と重力に従い、俺の身体はいっそ面白いくらいポーンと飛ばされた。
† † †
風を切る音、肌で感じる爽快感!
やっぱりいいわ、ジェットコースターって!
久しぶりのデートで来た遊園地。遊園地と言ったらジェットコースターでしょ!
「きゃーきゃー☆」
――いま、あたし風になってるわ!
「あ〜」
超人的な身体能力をしているからスピード感に慣れていると思う蒼も、ジェットコースターを楽しんでくれているようだ。
あたしと同じく両手を投げ出し、絶叫する蒼。裏の世界とやらの人たちなら今の彼を見たら驚くだろう姿。
だらしなく「あ〜」なんて言ってあたしの真似をする人が、魔王なんて言われて多くの人から畏怖されている。そんな彼の無防備な姿を目にすることが出来るのは妻たるあたしたちの特権だ。
彼は決して善人ではない。気に入らなければ平気で人を殺すし、理不尽な要求もする。暴君だなんて呼ぶ人もいる。
――でも、そんな蒼があたしたちの旦那様。大好きな人なのよ!
彼が善人であろうとなかろうと、悪人であろうとなかろうと、そんなのあたしたちには関係ない。彼が彼であるという点、そしてあたしたちがあたしたちであるという点だけが大切なのだ。蒼なりの言い方をすれば、世間なんてクソくらえね。
神様だとか裏の世界だとかよく知らないし分からないあたしだけど、そんなあたしだからこそ魔王なんてやっている彼の心を癒したい。
普通に起きて、ご飯食べて、いちゃちゃして、喧嘩して、仲直りして、愛し合う。そんななにげない日常を彼に与えることが出来るのはあたしだけ。あたしたちだけなんだから!
「あ〜れ〜」
――こんなバカみたいな、旦那様を愛せるのは世界広しといえども、あたしたちだけだろうしね。
だからこそ、あたしは遊ぶ。心の底
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