第七話「△デート・鏡花前編」
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自分の腕を絡めた鏡花は早速、第一のアトラクションへと向けて歩を進めた。小振りではあるが確かな女性特有の柔らかさが腕に伝わる。
鏡花は可愛くもあるが、どちらかと綺麗寄りの顔立ちをしている。本人は気にしているため口にしないけど、そのモデルのようなスレンダーな体格に合ったほどよい大きさの胸が、組んでいる腕を軽く圧迫していた。
気づかぬ鏡花ではあるまい。おそらく態とだろう。
それが分かるために、俺の頬は早くも緩み始めていた。
「最初はあれに乗りましょっ」
「ジェットコースターかぁ」
絶叫系でお馴染み、そして鉄板のアレだ。
――ちょっと渋い顔をしちゃったけど、デートの雰囲気を壊してまで断るのもアレだし、乗りますかねぇ。それに、うちのお姫様のこんなキラキラした顔見たら、断れないっしょ。
別に絶叫系が苦手というわけではない。素の足でジェットコースターと並走できる俺だし、むしろ新鮮さや妙な爽快感があって好きなほうだ。
ではなぜ、少し渋ってしまったのかというと……まあこの後すぐわかる。
――鏡花は忘れてんだろうなぁ。そんなドジッ娘の鏡花さんもぼかぁ好きですけどっ!
ほかのアトラクションは一時間や二時間待ちが多かったのに対し、ジェットコースターは比較的空いている。わずか三十分で順番が回ってきた。
「お荷物はこちらで預かりま〜す。安全のためシートベルトの確認をいたしま〜す」
妙にポワポワした雰囲気の作業員のお姉さんに安全ベルトが固定されているのかを確認してもらい、鏡花はポーチを預けた。
自分でも両肩を通すように下げられている安全固定器具に手を掛け、異常がないかどうか調べる。
――問題ないな。今は……。
ブザーが鳴り、ゆっくりと鉄の箱舟が動き始めた。
山なりとなっているところの頂までゆっくりと進んでいく。それに伴い、隣からわくわくしたオーラが漂ってくる。
――楽しみなんですね鏡花さん。わかります。
鉄の箱舟は頂に達し――急降下した!
「きゃー!」
両手を上にあげて笑顔で叫ぶ奥さん。俺もそれにならって万歳をしてみた。
「きゃーきゃー☆」
「あー」
いささか棒読みのように聞こえるのは勘弁してくれ。こっちとら遊園地初心者なんだ。
特急列車も真っ青のスピードで幾度のカーブを曲がり、視界が上下し、急降下を繰り返す。
「あーれー」
俺も純粋な観客のつもりで流れに身をまかせた。
――カチャカチャカチャッ……ガギョンッッ!!
がぎょん?
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