第七話「△デート・鏡花前編」
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
今日はこれでお暇することにしてその場を後にした。次に逢う日はデート当日だ。
ほくほく顔で我が家に帰って来た俺だが、この日、最大の試練が待ち受けていたのをまだ知らなかった。
「あっ、おかえりー。蒼、約束覚えてるわよね」
ガリガリくんのソーダ味を食べていた鏡花は俺を見るなり、唐突に聞いてきた。
「約束?」
「……あんた、まさか忘れたなんて言わないわよね? 今度の日曜日!」
――今度の日曜日……約束……鏡花との…………あ。
なにを言わんとしているのか悟った俺の背筋からダラダラと滝のような汗が流れた。
「も、もちろん覚えてるさ。デデ、デートの約束だろ?」
「なんでどもってんのよ。あたし、楽しみにしてるんだからね。約束すっぽかしたら承知しないわよ?」
余程楽しみにしているのか、軽い足取りで去っていく鏡花。その後ろ姿を見送りながら、俺は心のうちで叫んだ。
――やっべぇぇぇえええええ! デート被っちまったぁぁぁぁぁ!!
† † †
あれから三日。
時は飛ぶように流れ、あっという間にデート当日。
非常に困ったことに、今日という日を楽しみにしてくれていた鏡花はなんと、デート場所に遊園地を選んだ。それも、俺が獲得したチケットと同じものを手に入れて。
流石は夫婦、似た者同士――なんて普段なら考えるのだろうが、今回ばかりは頭を抱えた。
――やべぇ、祐理と鉢合わせたらどうしよ……。
時間が被さっていないのは不幸中の幸いだ。鏡花とは十時に現地待ち合わせで、祐理とは午後の三時に待ち合わせ。
上手くいけば上手くいくかもしれない!
正直、薄氷の上を渡るようなものだが、賽はすでに投げられた。やるしかないんだ……!
「それにしても、やっぱり目立つか……」
遊園地のゲート前で鏡花を待つ俺は早くも衆人観衆の目に晒されていた。
今日の俺の格好はいつもより良い生地を使った黒の和服に、その上から群青色の羽織り物を羽織っている。
その昔は見渡せば和で溢れていたものの、今の時代では洋服が流行り、和服を着ている人はあまり見かけなくなった。大和の民の心はどこに行ってしまったのか、悲しいものだ。
和服がそんなに珍しいのか必ず振り向かれる。なかにはジロジロと無遠慮に眺めてくる者もいる始末。
――いい加減鬱陶しいな……殺るか?
昔に比べれば気が長くなってきた俺だが根柢の部分は変わらない。これからデ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ