反転した世界にて9
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る、ぐちゃぐちゃと、口の中を味わっているうちに、固く閉じられていた目元から徐々に力が抜けて、やがてとろんとした薄目に変わっていく。
扇情的だった。――そう思っていたのは、僕だけではないようで。
「ちゅる、……ぷはっ、あむっ!?」
「んぅ〜っ! チュ〜ッ、ちゅろ、ぷちゅる〜……っ」
息継ぎのために口を離したのも束の間、二度目を求めてきたのは、白上さんの方からだった。
「レロ、ちゅろ、ぶちゅ、ちゅ〜〜っ、ちゅる……」
さっきよりも情熱的に。僕の腰に回されていた腕が、いつの間にか僕の後頭部をホールドするような形に動かされていた。多少身をよじらせたくらいでは、外れそうにはない。
無論、外そうという気は、これっぽっちもなかったわけだけれど。もっともっと、と、どれだけ強く抱きしめあっても、どれだけお互いの口内を蹂躙しても、全然満たされることのない劣情と情欲が、次から次へと溢れ出していく。
……――ああ、クソ。
このまま押し倒してしまおうとした刹那、頭の片隅に残った理性が、此処ではだめだと遅すぎる警告を発した。
無粋な、と、咄嗟に思ってしまいながらも、僕は一旦白上さんの抱擁から、身体を背けるようにして、唇を離す。
「ふぁ……あっ……、あわわっ!?」
途端に、がっかりしたような……という表現ではちょっと生易しいくらいに、顔を青白く染め上げてしまう白上さん。
「う、あ、ご、ごめんなさ……、あ、あたし……っ」
なにに対するごめんなさいなのか。もう少しだけ踏み込んで思考すれば、その謝罪が、曰く“なんとなくイケそうだと勘違いして、調子に乗ってしまってごめんなさい”とか、そういう方向性の詫びであったことは、想像に難くないはずだったのだけど。
今は、今だけは、そんな些事に構っていられる余裕は、僕にはなかった。
「――部屋」
「うぇ?」
「部屋、来てよ」
◇
小動物みたい、とは、常々思っていたけれど。僕のベッドに腰を掛けて、肩を震わせて僕を見上げる白上さんの姿は、なんだか餌を待つ大型犬を連想させるものだった。
まだ、先ほどの後悔を引きずっているのだろう。どこか委縮して、肩身を狭めている白上さんは、なんだか叱られて小さくなった、しつけの良いゴールデンレトリバーって感じ。
「そんなにならなくても、いいのに」と、僕の言葉は、しかし字面通りには受け取ってもらえなかったようで、
「は、はひぃっ! や、その、はいぃっ……」
オーバーリアクション。
多分、僕が何を言っても、白上さんが抱くプレッシャーを、解きほぐしてあげることは出来ないだろう。
「ああ、もう……」
可愛いなぁ、もう。
――我慢など、出来るはずもなかった。言葉で駄目なら、態度で示す
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