第四十四話 不老不死その十二
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りましたから」
言いながら自分を可愛がってくれた曽祖父のことを思い出す。確かに大往生だったがそれでもだった。悲しく感じたのだ。
「本当に何度あっても」
「辛いでしょ」
「そしてそれがずっと続くんですね」
「人はね。それが終わるのよ」
自身の死によってだというのだ。
「最後の別れでね」
「けれど神様にはないんですね」
「それがどうしても耐えられなくて。愛するがあまり」
「愛するがですか」
「どうにかしたいと思っているわ」
また自分のことを言う聡美だった。
「本当にね」
「ううん、何かよくわからないですけれど」
実は聡美が今言っていることは全くわからなかった。そのうえでの言葉だった。
「銀月さんも悩んでおられるんですね」
「そうなるわね。実際にね」
「そうですよね」
「誰でも悩むものよ。人間ならね」
心が人間ならばだというのだ。
「そうなるわ」
「人間ならですね」
「そうよ。この話はこれで終わるわ」
充分話したと見て聡美はこうした。そしてだった。
上城にあらためてこう言った。今度の話はというと。
「それでだけれど」
「はい、今度は一体」
「このお店のパンだけれどね」
微笑んで二人が今食べているパンの話になった。
「どうかしら。このパンを村山さんにもね」
「そうですね。買っていって」
「食べてもらいましょう」
聡美は紅茶を飲みながら笑顔で言う。
「そうしてもらいましょう」
「そうですね。それがいいですね」
「美味しいものは一人で食べるより二人よ」
その明るい、暗いものがなくなった笑顔での言葉だった。
「そして二人よりもね」
「三人ですね」
「美味しいものは皆で食べてこそだから」
だから美味いと言ってだった。そうして。
上城は樹里にそのパンを買った。そのうえで不老不死のことも知った。それが決していいものではないということを。
第四十四話 完
2012・8・26
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