GGO編
百十九話 これからもよろしく
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一つのイメージが浮かんだ。
恭二の後ろに、黒い人型の影のような物が見える。それはその漆黒に包まれた姿の奥から覗く、骸骨の顔とその奥の爛々と輝く赤い瞳で此方を見据え、骸骨はうっすらと笑っているようにも見えた。
――死銃――
反射的に、詩乃はその名を思い出す。同時に理解した。
今彼を殺そうとしているのは、コイツだ。この本物の死銃が撃ち出した目には見えない幻影の弾丸が、恭二の心を打ち抜き、死へと追いやろうとしている。
それは、彼を虐めた同級生達の悪罵や嫌がらせ。受験の重圧や、彼に対する親の期待と、其れに対して答えられない己への劣等感。あらゆる物事に関して立ちはだかる、残酷な壁。
そう。
言わばこの死銃は、恭二を、詩乃を苦しめ続けた、この社会……現実と言う名の、世界その物だ。
それを理解した時、その余りにも巨大な影に、今度は詩乃の心が軋み、悲鳴を上げる。
詩乃から父親を奪い、母の心を奪い、更なる悪意を持って、異常な物を見るような興味と、大人たちの嫌悪の視線。そして同年代の子供達の悪罵を差し向けたこの世界。
他者よりも弱く、脆かった新川の心を、あらゆる重圧と自己嫌悪で、徹底的に破壊しようとする、この《現実》と名付けられた、余りにも冷酷な世界。
それが真の“死銃”だと言うのなら、そんな物に、一体どうやって対抗しろと言うのか。 そう感じた瞬間、遂に詩乃は、耐えきれず視線を俯かせ……そうして、真剣な視線で自分を見る涼人と、目が合った。
頭の奥深い所に、声が、響く。
『もし苦しかったら、いくらでも支えになってやる。俺も美幸も、全力でお前を助けてやる。だから……』
「……っ!」
そうだ。
学んだのだ。自分は今日、間違いなく、それを理解した。
確かに、この世界は一人で生きて行くには余りにも辛く、苦しく、そして冷たい。
しかし、それでも……
『こんな事……私は……!』
それでも、この世界のどこかには……救いがあるのだと。
「……君の言いたい事は、分かったよ」
「…………」
「でも、やっぱり私は君が死のうとしてるのを黙って見てるなんて出来ない」
「朝田さん……」
「私の事は、とりあえず今は良いの。だから、聞いて」
困ったように、再び悲しげな顔をして、再び何事か(恐らくは否定的な言葉を)を口に出そうとした恭二の言葉を、詩乃は遮る。
「私、言ったよね。今日、大会に出て良かった、これからは、違うやり方で、頑張ってみるって」
「うん……」
「昨日までずっと、私自分がそんなに簡単に変われるなんて思って無かった。これから先も、たとえ長い時間がかかったとしても、自分一人で昔のことと戦っていくんだって、そう思ってたの」
「…………」
詩乃の言葉を、
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