ALO編
epilogue 彼女の腕の中で3
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更責めたところでどうにかなるものでもない。いや、それでも、たとえソラが還ってこないとしても、責めたほうがいいのかも知れない。だが俺は、黙ってそのウィンドウにある、銀の手袋を受け取ることしかできなかった。
「そして、もう一つ。こちらは、「私を呼び覚ましてくれた」ことへのお礼だ。とっておきの物を用意しておいたから、期待しておいてくれたまえ」
「……なんだ? これ?」
続けて表示されるウィンドウ。
その名前は、俺が見たことのないものだった。
《MHCP−002 Sora》。
見慣れない英語の羅列を見た、その瞬間。
視界が眩い輝きに染められた。
◆
「では、わたしは行くよ。ふふ、思い返せば君はあの時には気絶してしまっていて、私の『魔王』としての姿をみせていなかったからね。悪の帝王、というものを演じてみたいというのもあって、今回はそれなりの演出を考えているのだよ。楽しんでくれたまえ」
ゆっくりと、ヒースクリフの姿が霞んでいくのを、視界の端で見送る。
正面には。
正面にいるのは。
「そ、そ、ラ……?」
その、もう俺の記憶の中にしかいないはず、懐かしい姿。
見覚えない純白のローブを纏って、目を閉じて浮かぶ、それでも間違うはずのない彼女の姿。
「……ソラ……」
かつて、俺の愛した女性の、それだった。
―――私が走査したアインクラッドのデータの中で、数名のキャラクターデータが他のプレイヤーに比較してかなり多く保存されていたのだよ。それが、君が六十六層で受けた『黄昏の境界林』で取得した《追憶の聖晶石》のようなアイテムのためか、それとももしかしたら存在した『蘇生クエスト』のためかは分からないが、ね。
既に声だけとなったヒースクリフの説明。だがそんな物は、もう俺の耳には入ってこない。
「ソラぁ……」
名を呼ぶその声が、湿って喉に絡みつく。視界が濡れ、目が霞む。
―――私はそれらを使って、彼女の外見、思考パターン、声紋データを統合、そしてそれをSAOで実装していた「メンタルヘルスカウンセリングプログラム」と組み合わせた。アイテムの説明として言うならば「プレイヤーの心の異常をモニタリングし、カウンセリングを行う《ソラ》という疑似人格を呼び出す」というものだ。
「ソラあっ……」
歪む視界の中で、彼女の目が、ゆっくり、ゆっくりと開く。
―――ただ、思考や外見は彼女と全く同一だが、残念ながら記憶まではトレースは出来なかった。そもそもナーヴギアの脳のスキャンにはそこまでの機能は無いし、スキャンだけで記憶の読み取りは不可能だからね。だからそれは、「彼女であって彼女で無い」存在ともいえる。この存在は、もしかしたら君
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