第119話 劉協の複雑な想い 後編
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「私の望みは民草が安寧に暮らせる世を創ることでございます。飢えぬ者を無くすことはできないかもしれません。ですが、少しでも多くの者が飢えない世を創ることは出来ると思っています」
「私にはお前の望みは叶えてやることはできない」
劉協は私の顔を見つめながら自嘲気味に言いました。
「私にはせいぜい漢室を守ることしかできない。洛陽の都のみであれば飢える者を減らすことはできるかもしれない。だが、私にお前の望む世を創ることはできないだろう」
劉協は己の力無さを悔しそうに下唇を噛み私に言いました。
暫し私と劉協の間には重苦しい空気になりましたが、それを破ったのは劉協でした。
「劉ヨウ、ありがとう」
劉協は私に優しい笑みを浮かべ言いました。
「皇子、臣でありながら不敬な発言をしてしまい申し訳ございません」
「よい、私はお前の話を聞けたこと嬉しく思うぞ。劉ヨウ、今日は大義であった。帰ってよいぞ」
劉協は元気な声で私に応えました。
「最後に一つだけ聞かせてくれ。今日のように、また語らう日が来るだろうか?」
彼女の表情は私への何かしらの期待を抱いている様子でした。
いずれ、また劉協に会うことがあるでしょう。
董卓は劉協を必ず支えることでしょう。
私の知る董卓であれば、名君の素質を持つ劉協を無視できないはずです。
賈?は猛反対でしょうが、董卓の意を組み最後まで奮闘すると思います。
それに賈?は董卓に天下を取らせたいと思っています。
賈?の夢実現のためには中央に出る必要があります。
今の董卓は地方の一勢力でしかなく、前回の黄巾の乱では大した戦功は立てていません。
今のままでは董卓が天下に覇を唱えるなど夢のまた夢、最終的には危険な賭けと分かっても賈?は選択せざる終えません。
「皇子、生きていれば必ずまたこのように語らう日が来ることでしょう。私は皇帝陛下とお約束いたしました。仮に皇子と敵味方に分かれようと、貴方様の御身とお命はこの劉ヨウが父祖に誓って必ずやお護りいたします」
皇帝陛下との約束は反古にするべきか悩んでいましたが、気持ちが定まりました。
劉協は私が護り抜きます。
揚羽が暗殺を計画しようと、この私が決して認めません。
「そちは悪人には成れぬようじゃな・・・・・・。劉ヨウ、お前の真名を私に預けてくれぬか? 私は伴侶にしか真名を預けることはできない故、お前に真名を預けることはできない。替わりに私を『協』と呼び捨てで呼ぶことを許す」
私の気持ちを察したかどうか分かりませんが、劉協は私に真名を預けて欲しいと言ってきました。
彼女は私の近臣として招くとことはないでしょう。
彼女も私の目指す先を薄々感じているのかもしれません。
それでも私を咎めるのでなく信頼の証を示すと
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