ALO編
episode6 重み4
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キリト君!」
私は叫んだ。彼を縛る、システムの呪縛を断ち切って。
◆
「……さて、ね……」
突然の衝撃に、俺は、苦笑していた。ここまでいきなりでは流石にどうにもならない。その衝撃はどのような理屈かは分からないが、全く気配無く放たれて俺のHPを一撃で消滅させた。だけでなく、俺の全身はまさしく雷に打たれたような激痛に貫かれていた。
ALO……いや、VRワールドでは生じるはずの無い、異常な痛み。
今までの、「制限内の痛み」を超えた、激痛だった。
の、だが。
「普通だったら、気を失うほど痛いんだろうけどな……」
生憎と俺の体は……いや、頭は、か、どっかがおかしくなってしまっているおかげでその痛みが「リアルに感じ取れない」。おかげ様で俺はこれほどの痛みを感じようとも「死ぬほど痛い痛みが体に走った」という文字を読んでいる様な感覚しかないのだ。
だから。
「こうしていられちまうってわけだ……」
こうして、漂っていられる。
まあいい。不可解な点は多いが、おそらくこれが、俺のこの世界で初めてとなる「システムに守られた死」という奴だろう。この視界の端に表示された一秒ずつ減少していく数字が、噂の『蘇生猶予時間』という奴か。
もっとも。
「俺、生き返られるとは限らないけどな……」
この「ログアウト不可空間」での死が、どういった結果をもたらすのか。それは、正直俺には分からない。もしこれが、あの懐かしい世界での死と同じものなら、今この時は俺に最期に残された時間ということになる。あの世界での《回魂の聖晶石》という微妙な蘇生アイテムの説明書きを思い返せば、向こうの世界での蘇生猶予時間は十秒だった。それに比べれば、俺に残されたこの時間は随分と長いもんだ。
だが。
「ははっ……笑っちまうな……」
その長い走馬灯で見るのは、奇しくもあの世界での最後の戦い……SAOでの、最終戦で見たあの「あっちでの走馬灯」によく似ていた。
思い出すのは、彼女のこと。懐かしい、暖かい笑顔。
その記憶の中の笑顔に向かって、あの世界での問いかけを、繰り返す。
「俺は出来たかなあ。ソラの果たすはずだった、『勇者』の役割を代わりに果たせたかなあ…」
返事は来ない。当然だ。ソラはもう、この世界には……いや、この世の何処にもいないのだから。それでも、問いかけずにはいられない。その、俺の記憶の忘却によっていつかは消えていく、思い出の中の笑顔に向かって。何度も、何度も。
残りの時間が、目に映る。あと、五秒。
その、もしかしたら俺の最期となるかもしれない言葉は。
「会いたいなあ……」
未練がましい、涙交じりの呟
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