ALO編
episode6 重み3
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のレイピアの切っ先を見た。
威風堂々に繰り出される、『神聖剣』の十字盾を見た。
目が霞むほどの連撃を紡ぎ出す、『黒の剣士』の双剣を見た。
そして最後に、『彼女』の手の中で舞うように踊る様々な武器を見た。
「おおおおおっ!!!」
「ひぃっ、ひぃいいっ!!?」
致死の雷撃の雨をくぐり抜けた体が、這いつくばった男の眼前に滑り込む。そのまま下から振り上げるように放った強烈な角蹴りが男の顔面にヒットし、その体を反対方向、入口ドア横の壁に叩き付ける。叩きつけられた男の口から苦悶の声が漏れる。
―――弱い。その心は、あまりにも弱い。
あの世界で俺の前に立って……或いは背中を合わせて剣を振った仲間たちは、もっと誇り高かった。自らの力と心の強さで鍛え上げた自分の腕に誇りを持ち、その腕を己の信念に沿って振う気高さがあった。こんな、なんの苦労も無く手に入った力を子供の癇癪の様に振う奴なんて、誰もいなかった。
「ひぃいいいっ!? ゆ、ゆる、ゆるし、ゆるしっ、ひっ!?」
三度目の雷撃が生じることは無かった。
慌てて起き上ろうとした男の目前を、俺の漆黒のブーツが派手な音を立てて踏みつけたからだ。捕食者に見つかった……捕えられた小動物のように、男が震えながら俺の顔を見上げる。その顔……一からポリゴンで作り上げたのだろう秀麗な顔が狼狽しきって歪み、歯がガチガチと音を立てて目からは涙が零れる。もうこの男には、自分が保護コードに守られていることもここが安全な仮想世界であることも、認識できていないだろう。
そしてもう、その手は動いていない。
心は、十分に圧し折った。
煙をあげそうなほどに熱を発する脳神経回路に鞭打って、最後の声を発する。
「とっとと、消えろ」
「は、はぃいぃ!!!」
ふら付きながらも飛び起き、足を縺れさせながら走り去っていく男を見送る。
そうして気づいた。
俺の熱。あれは。
「怒ってた、のか。……俺」
あの男は、言った。自分なら、俺如き簡単に殺せると。自分には力があると。
それが、我慢ならなかった。あんな弱い男が超常の力を持つのが、許せなかった。
これでも語彙はずいぶん学んだものだったが、それでもこの感情には、名前が付けられない。きっとこの先いくつ記事を書いても、いくら日本語を学んでも、この感情を言い表すことはできないままなのだろう。
「さて、と」
一息ついて、ゆっくりと足を進める。男の逃げて行ったドアに触れ……やれやれと首を振って俺は身を翻した。追う気は、無い。そして……追うことも出来ない。奴が走り去った後、その扉……この世界には相応しくない自動ドアが、開かなかったからだ。あの恐らく管理者IDを持つ者にしか開
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