ALO編
episode6 重み2
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下っ端の貴様に自種族外の領土のログアウト設定までできるのか? 出来なければ俺は即座にログアウト、貴様のことをすぐに情報掲示板に書いてやるぜ?」
「ひ、な、うっ、な、」
「どうなるだろうなぁ、「ゲームマスターが紛れ込んで難易度調整してた」なんて他の種族に知られたらなぁ? 「自種族だけ甘くしていたんじゃないか!?」って声が溢れるんじゃないか? 最悪このゲーム自体がサービス中止にまでなるかもなぁ? そうなったら世界樹の上でお姫様を囲ってる奴がなんて言うかなぁ?」
朗々と自説を展開する。
それに合わせて、男の顔が赤くなったり青くなったりを繰り返す。
勿論、こんな説は言うまでも無く穴だらけだ。ログアウト不可空間での死がどうなるかなんてやってみなければ分からないし、こいつが下っ端、ってのも推測だ。こんな与太話をネットに書いても信じて貰えるとは到底思えないし、ゲームが潰れるなんて夢のまた夢だろう。
だが、それを悟らせない。
自信に溢れる態度で、当然そうなってしまうと、思い込ませる。
「さあ、俺を殺すのは問題だなぁ? どうする? このまま尻尾を巻いて逃げていくなら、俺は別に追い掛けはしないぜ? さぁ、行くならさっさと行けよ、下っ端」
行け。行ってしまえ。
だが、流石にそこまで上手くはいかなかった。
当然と言えば、当然か。
「ま、ま、まだだっ! ぼ、ぼ、僕には、未実装魔法があるっ!!!」
立ち上がった男が、左手を振う。本来は呪文の詠唱無く発動しないはずの魔法効果が生まれる。初めてみるそのエフェクトは、まるで無数の雷の短剣が宙に漂うようなもの。その空中を漂う十を超える電光が、切っ先を俺へと向ける。
「み、み、未実装魔法、《パラライ・ソードダンス》! こ、こ、これで麻痺させてやれば、お前はもう逃げられないぞ! ぼ、ぼ、僕の麻痺は、この世界のレベル外だ! その効果は三十分! お、お前なんて、すぐ倒せる!」
「それがどうした?」
ヒステリックに叫ぶ男の声を、遮る。自分を鼓舞するかのようなそのセリフを、最後まで言わせはしない。それだけで、男の顔が委縮しきったそれに変わる。立ち直らせてはいけない。こいつには、逃げ出してもらわないとならない。立ち直る隙は、与えない。
……と、頭では分かっている。
だが俺にはこの瞬間、何かが頭では無いどこかに宿るのを感じた。
それは……あえて言葉にするなら、……「熱」、か。
「ろ、ろ、ログアウト不可の、麻痺だ! そ、そ、そのまま麻痺させ続けてやれば、に、二、三日でこ、ころ、殺せ、殺せるんだぞっ!!!」
その「熱」が、俺を黙らせる。
そのかわりに、脳裏を赤く鋭く染めていく。
「ど、ど、どうだ! ぼ、僕は、」
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