覚醒
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最初に目に入ってきたのは木だった。
何を言っているのかわからないだろうが、オレにもさっぱりわからない。
「……どこ、ここ。」
背中にはふかふかした感覚が、体の上にはふんわりした感覚があり、後頭部には沈むような感覚がある。
目を動かしてみれば周りは白い波打つものに囲まれいるのを見た。それは時折激しく動き顔を殴ってくる。
「カーテン?」
それは肌触りのよいカーテンだった。そしてこの肌触りは布団──ベッドだろうか。ついでに薬品の臭いもする。どこかの医務室か?
「……ぐっ……。」
体を起こそうとしたが体が動かない。視線を動かしても掛け布団以外体を止める物はない。幸い顔は動く。
「だれか……いないのか?」
帰って来るのは静寂のみ。
誰もいない。オレ一人。さみしさなんて感じたことは少なかったが今度ばかりは心細い。そしてここは見知らぬ土地、不安だ。この先どう生きていけば。幸いどこかの施設に収容されているみたいだし、おかしな研究の被験体になりさえしなければどうにでもなるだろう。
「―――――――、――――――。」
「―――――、―――――、――――――。」
その時オレに耳が何か音を拾った。はっきり聞こえないがオレの喉からは出ない音、女性ならではの高音だ。ソプラノあたりかな?
「では。」
「はい、それでは。」
その声はすぐ近くから聞こえ、カーテンの端に皺がよる。
「あっ……。」
「えっと……。」
目が合ってしまった。なんなんだこの美少女は!しかしここは冷静に行こう、なんだってオレは紳士なのだから。
「えっと、どちらさま?」
「あ、あたし、エリカ。冒険者だよ。あなたは?」
「オレは黒崎和也。学生だ。ところで冒険者って何?」
「え?」
「え?」
生まれてこの方冒険者などという言葉は聞いたことがない。そもそもこのエリカとかいう女の子、明らかに日本人ではない。服装もどこか中世ヨーロッパっぽく見える。
「え?冒険者がわからないの?」
「聞いたことないです。」
「ちょっと待っててね。」
何やら慌てた様子でカーテンを出る。そして戸の開閉音。
5分くらいたったころ、エリカは白衣を着た初老の男性を連れて戻ってきた。
「ワシはこの施術院の院長だ。本当に冒険者を知らないのか?」
「はい、まったく。」
これだけ話して彼らは再び退出した。
「(エリカ、彼はもしかしたら記憶を失っているのでは?)」
「(まさか。彼は自分の名は言えたよ?)」
「(いや、名前以外思い出せないということはたまにあるのだ。名前くらい強烈な印象があるものはない。あとは親の名前くらいか。)」
「(彼、どうするの?)」
「(しばらく預かる。そのあ
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