ALO編
episode6 重み
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多数のプレイヤーが笑ったように、この原理はまだ……いや、最後まで解き明かされることはなく、結局本当に存在したのかどうかすらも分からず終いだった。だが、俺にはあの充実した日々の中でふと考えていた、ある一つの仮説があった。
それは、オブジェクトのデータの重みによる現象。
あの世界には、フォーカスシステムという視覚効果が採用されていた。膨大なポリゴンデータを同時展開するのではなく、プレイヤーが意識を向けた物にだけ詳細なディテールを与えるこのシステムは、原理上目を向けてその物体を認識されるまでのごく微小なタイムラグが存在することになる。
勿論このVRMMOを動かしているエンジンの性能は、そんなものを一切感じさせない。だがそれはフォーカスシステムだけが作用している状態で、の話だ。例えば隠し扉。たとえ《索敵》スキルが看破できるレベルに無かったとしても、「この扉のデータは看破出来ない、そのため何もない様にこのプレイヤーに見せろ」というデータのやりとりが行われているはずなのだ。そのやりとりによるデータ量の差が、「違和感」或いは「重さ」として感じるのではないか。
勿論、単なる勘に過ぎない。カーディナルの性能を考えれば、荒唐無稽と言える。
だが俺は、その勘を信じた。
そしてやってきたのは、一人のプレイヤー。整った顔に、スプリガンにしては珍しい柔らかい長髪を流した長身の男。苛立ったようにその髪を掻きながら扉の前に行き、周囲を簡単に(《索敵》スキルも探索生物も呼ばずに)見回して確認して。
「―――全く――――誰が――いちいち――面倒な―――須郷さんも――」
手から取り出した四角い……カードキーで、その扉を開けやがった。
(……ビンゴ、だ)
鋭く、無音、無気配を保ったまま移動しながら、心の中で拳を握る。
あの『閃光』の映ったスクリーンショットを見た時、俺は確信した。この世界を作った奴は……少なくともアスナを幽閉した奴は、天才だがバカだ。あんな場所に幽閉した人間を晒すなど、「捕えたお姫様を見せびらかしたい」なんてガキの発想でしか遣り様がない。そんなことをする人間だ。そしてそんなことをするバカなら。
(……下の世界に、操作用コンソールを置いていても不思議はない、よな)
バカバカしいが、あんなバカなことをするゲームマスターなら、可能性はある。世界樹のクエストが一年もの間クリアされることがなかったのは恐らく、何らかの調整が為されていたのだろう。例えば、「下の各々の種族にGMが紛れ込み、クリアされそうな部隊が編成された際にはこっそりとガーディアンの強さを引き上げる」とか。
そして。
(キリトがスプリガンで助かったぜ…
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