ALO編
episode6 彼女の想い2
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「……行く所がある。……やるべきことが、あるんだ」
向こうも、真っ直ぐに俺を見返す。
細い目の奥の、強い意志を秘めた瞳。
『それはもしや……いえ、断言していいですね、何か危険を伴うのですね。この世界でのゲームオーバーなどではないもっと大きな……それこそ貴方があの『呪われたゲーム』で体験したような。……そ
こには、貴方が行かなければならないことなのですか? 私が変わって実行することは出来ないのですか?』
「……分かるもんかね。まあ、その通りだよ。……俺にしか出来ないし、俺がしたいことなんだ。だから、行かせてほしい。だから、」
『嫌です。お断りします』
意を決しての言葉は、途中で遮られた。瞳は真っ直ぐに俺を見詰めたまま、即座に拒絶のメッセージが打ち込まれる。そんな彼女の聞き分けのなさに、大きく溜め息をつく。この調子では、どうしてもかと確認しても、返事は変わらないだろう。
『貴方を危険には晒せない』の言葉が、何度も強調されて表示される。
「……そうか…」
はあ。もう一度、深く溜め息をつく。仕方ないか。
そう、仕方ないな。
この手段は……あの名は使いたくなかったが、仕方ない。
もう一つ溜め息をついて、ゆっくりと、口を開く。ゆっくり、ゆっくりと。
「……なら、答えて……いや、答えろ。言ってみろ。自分に与えられた名を。その、意味を」
◆
「答えろ。言ってみろ。自分に与えられた名を。その、意味を」
突然、周囲の空気が硬質で張り詰めたものへと変貌した。いつもの……現実世界の彼からすれば幼すぎるその声すらも、口調の変化と共に堂々とした重い威厳を持つように錯覚する。その口から放たれた言葉が、私の心の奥深く……いや、私という人間の根幹を揺さぶった。
「……神月、でございます」
その言葉には、逆らえない。私の口が自動的に動き、現実のそれと異なる声が生まれる。
だが、声が違えど、姿が違えど、私という存在を為すその言葉は、決して変わることは無い。
「意味するところは、付き従う者。四神『守』の家に仕え、侍り、『付き』従う者。育てて頂いた恩義を胸に、己の全て……心も体も声も唇も、全てを捧げることを定められた者でございます」
神月。その名は、名字では無い。様々な理由で親のいない子達が傘下の孤児院へと集められ、育てられる過程にてその資質を見込まれて本家に仕えることを定められた……いや、仕えることを選んだ者にのみ与えられる、称号としての名字なのだ。
「……では、言ってみろ。仕えるべきものは何だ? 従うべきは誰にだ?」
なおも続く、厳かな言葉。私の眼にはもう、小さな仮物の体は映っていない。映るのは大きく、強
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