第十二話「死神」
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うことか分かる?あの人はもう死ねないのよ。数百年もの間、彼はこの城で人間たちの上に君臨してきた。体は鋼のようになり、ナイフで腹を刺してもナイフのほうが曲がる。あの人の血は不死の血、正確には不老不死。そんな存在が死のうとしたってできるはずないでしょ?」
「だが俺はやつを倒す」
「知ってるわ、わたしは神を通して、あなたのことを知った」
「おれを知っている?」
「そう、あなたはそう神を信じ始めてる。あなたはそうすることによって、自分に内在する不思議な力まで信じ始めた」
「魔法?」
「そうよ、だから神はあなたを選んだ」
「なら、おれはやはりあいつを倒す」
「そう、でもわたしはどうしてここにいると思う。なぜ、あの人の娘が、あの人を殺す死神なのか?疑問じゃない」
「そういえばそうだ。何故だ?」
「神は言った。クドロワは、吸血鬼だが我を信じていた。善良であるならかならずいつかは自分を救ってくれると」
「クドロワが善良?そんなことが?」
「吸血鬼なら吸血鬼なりの善があるのよ。わからないの、犬や猫だって善良であろうとする、あなたたちはいや人間は数が多すぎて、なんにでも自分たちを基準に置くからいやなのよ。でもいいのよ、あなたは間違ってない。人間として善であるわ」
「……」
「どうしたのよ」
「事情が変わった」
「なんでよ?」
「そんなことを聞いたら奴を殺せない」
「そう、なら私が殺す」
「それもだめだ」
「わたしは父の望むことをするのよ!そのために神はこの大鎌をくれた。そう父の望みは死ぬことよ」
「いや、違う」
「え?」
「あの人間は、死のうなどとは考えていない。おれは今分かった。あれは人間だ、だがすこし体の機能が違うだけだ。そしてそれに苦しんでいる。そしてそれでも生きようとしている」
「なにいってるのよ!あなたに何がわかるのよ!あの人の!何が!」
「なぜ?伯爵が善良であろうとしているなら、それには、生きなければならないということだ。生きてこそ、善というものは機能する」
「そ、そんな」
「思えば、わたしはクドロワに会った時から奴を否定しにかかった。やつにしてみればものすごい痛みだったろう、天馬に乗って現れたものが自分を少しも理解しようとしないのだからな」
「つまり、父は、あなたを天の使いかなにかだと思ったと?」
「そうだろう。唯一どんな存在でも等しく公平に救いを与えるのが神だ。おまえのお父様はすがるような思いで祈り、そしておれに期待をしたのだ」
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