ALO編
episode6 彼女の想い
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
言って笑った。なんでもモモカはあの後すぐに二人に連絡、本アカで入りなおしてからプーカ領の真ん中で皆に助けを求めたらしい。あれほどの人気プレイヤーがそんなことしていたのだ、まあファンの連中のあの熱気も分からなくはない。
「あの子が人前に出て歌うの、すごく久しぶりだったよ。ありがとうね」
「うん〜! これからも、サっきゅんをよろしくね〜」
リアルでも知り合いらしい二人は、そう言い残してモモカの後を追った。なんでもこのシークレットライブで、そのために落としかけの彼女の横笛を取りにきた……という名目でのこの行軍だったらしい。援軍来た連中は特別に最前席なのだそうだ。それであの熱気かよ、全くオタクってのは怖いな。
「彼女、実は以前から外に行くことあったんだぜ? 『冒険とかもしたいんです』って」
「でもやっぱ有名人だしいろいろと大変でナ。俺らも一緒に行けたノ、数回だけだったしナ」
彼女の最終防衛ラインを務めた二人の『戦闘狂』のプーカは、そう言って頭を掻いた。どうやら彼女はオタク連中だけでなくまっとう(?)な『戦闘狂』にもファンがいるらしい。そんな無節操な、とも思ったが、彼女の歌……『風の啼く岬』で聞いたそれを思いだせば、十分に納得できた。あの声は、あらゆる人を惹き付けるだろう。
サクラヨシノ……いや、モモカ。
彼女はいったい、どんな気持ちでこの場所に援軍に来たのだろう。
俺との間の壁を無慈悲に突きつけられ。
信じて旅した、仲間と信じた人に突き放されて。
それでもなお、助けに来た。
自分が過去に負った傷の痛みをおしてまで、ここに来た。
その感情がどんなものか……どれほどのものか、俺には分からない。
過去に負った傷の痛みに怯んで、彼女を突き放している、そんな俺には。
ただひとつ、分かるのは。
―――だから、私も聞きたいです。シドさんのこと、全部。
はにかむような、モモカの泣き笑いの笑顔。
その笑顔に宿る彼女の想い。
俺の心を奥底を締め付ける彼女のその感情は、痛いほどにはっきりと俺に伝わっていた。
◆
「はぁ……やっぱ、話さねえと、だよな……」
皆が去った後、天を駆ける牛車の上で呟く。
返答は、下からウィンドウ画面で返ってきた。
『貴方の思うままにどうぞ。が、彼女の思いを考えればそれ以外の選択肢はチキンどころか人間、いえ男として終わっていると思いますのでそこのところをお忘れなきように』
ブロッサムもぎりぎりのところで生き延びており、下で御者を務めてくれている。それにしてもコイツは相変わらず口が悪いな。俺だってもう全部……少なくとも俺がSAO生還者だってことくらいは話さなければならないだろうってのは分かってる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ