ALO編
episode6 決戦、空飛ぶ狩人
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なく続けていた、既にマスターの《索敵》が、敵の接近を素早く知らせてくれた。
◆
「えっ!? で、でも、その、」
「モモカ。時間が無い。今ならまだログアウトして隠れれば何とかなるだろ」
ネットゲームの世界では常識だが、この世界でもログアウトは特定条件下でなければ一瞬では不可能なように設定されている。簡単に出来ては逃げるために即落ちというのが出来てしまうため、一定時間はアバターが残ったままの『待機状態』となるのだ。だが、それでもその「待機状態」も、場合によっては間に合わなくもない。俺の無駄に広い索敵範囲でほんのわずかに感じられるほどの距離、そして敵がこちらが気づいていないと考えて慎重な接近を期している今なら、まだ可能性はある。
だが、モモカの目は戸惑ったような、思いつめたような瞳のまま、手を動かそうとはしない。
(ちっ……)
モモカも、初心者というわけではない。俺の説明が分からなかったわけではないだろう。この状況下での迅速性の大切さを理解して、それでもなお動こうとしないということは―――彼女に必要だったのは、説明ではなく。
「……モモカ。一緒に来てくれて、良かった。ここからは俺がやる。これは、俺の問題なんだ」
ゆっくりと、そしてはっきりと『説得』する。
モモカとブロッサムには、今俺が急ぐ理由を何一つ話していない。「《竜鎧》を取りに行く」と言っただけで、世界樹攻略のことも、キリトのことも、SAOのことも……勿論、「彼女」のことも。そんな俺になぜここまでついてきてくれるのかと聞いたら、モモカは「だって仲間ですから」と言って笑ってくれた。
そんな彼女を、これ以上俺のわがままに巻き込むわけにはいかない。ましてや。
「俺のわがままのせいで、モモカの楽器を落とすなんて、絶対に駄目だ」
「っ、で、でも……」
「速く! もう時間が無い!」
「っ……」
強く、その肩を掴んで言う。モモカの分厚い丸眼鏡の奥の目が、儚く、寂しげに揺れる。そこに見てとれる感情が、俺には分かる。頼られない、頼ってもらえないことへの、悲しみ。自分と相手の間にあった壁を、乗り越えられなかったことを痛感する無力感。だが、それを拭ってやるわけには、いかない。
かつてそうしたために。
そうしてしまったがために、巻き込んだ人を、俺は知っているから。
あれを、もう二度と繰り返したくない。
モモカの手が、如実に躊躇うように揺れながら、ウィンドウを操作する。
伝わったのか……納得してくれたのかどうかはわからんが、とにかくログアウトしてくれるようだ。
「……モモカ。ありがとう。《風の啼く岬》での歌、俺は一生忘れないよ」
「っっ!!!」
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