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ランメルモールのルチア
第三幕その二

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第三幕その二

「数多くな」
「代々に渡って。貴様の一族に私の一族の者は」
「その怒りがわしをここまで誘ったのだ」
「私を生かしてきた」
「貴様を斬る」
 エンリーコは言い切った。
「このわしがだ」
「いいあろう、私もだ」
 エドガルドも憎しみに満ちた目で彼に返す。
「貴様の心臓を貫いてやろう」
「そうするというのだな?」
「そうだ」
 まさしくその通りだというのだった。
「父上の墓前で貴様の心臓を貫いてやろう」
「いいだろう、それではだ」
「何時だ」
 エドガルドは今度はそれを問うた。
「それは何時なのだ」
「夜が明けはじめ」
 エンリーコは問いに応え時間を述べはじめた。
「最初の光がさす頃だ」
「場所は何処だ」
「レーブンズウッド家の冷たい墓前だ」
「私のその家の墓前でか」
「そこならば文句はあるまい」
「望むところだ」
 そしてエドガルドはすぐに返した。
「そこで貴様を斬り父上にそれを見せよう」
「死ぬ覚悟をしておけ」
「それは貴様だ」
 また言い返すエドガルドだった。
「この私の手でな」
「太陽よ」
 エンリーコは上を見上げて宣言した。
「早く昇るのだ」
「そうだ、昇れ!」
 エドガルドも言った。
「朝になるのだ。一刻も早く!」
「そして貴様の最期を見届けてやる」
「不吉な花環の様に」
「貴様を倒し」
 さらに言葉を続けていく。
「死を賭けた憎悪の盲目的な怒りを」
「恐ろしい闘いを夜明けの光を」
「照らすのだ!」
 そしてエドガルドはまたエンリーコに告げた。
「そこで貴様の心臓をだ」
「刃は貴様の上にある」
 エンリーコもだった。
「レーブンウッド家の墓地で」
「夜明けにだ」
 こう言い合いまた睨み合い。自然と言葉が出て来た。
「地獄の悪霊達は復讐を叫び」
「我等の魂を残酷に支配する」
「我々の心に燃える怒りは響き渡る雷よりも」
「咆哮する暴風よりも激しく恐ろしいものだ」
 二人は互いに部屋を出た。風が部屋の中に入り蝋燭の火を消してしまった。後には不気味な沈黙があるだけだった。他には何もなかった。
 大広間はエドガルド達が去った後喜びの場に戻っていた。そしてそこで誰もが華やかに笑いダンスに興じていた。美しい音楽も聴こえてくる。
 その場で誰もが。賑やかに歌っていた。
「さあ祝おう」
「この婚礼を」
「今幸せは戻ったのです」
 こう口々に言っている。

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