第百二十五話 独眼龍の上洛その十二
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「二人共よく尽くしてくれる、他家だというのにな」
「徳川殿と浅井殿ですか」
「御二人に」
「うむ、礼の品を贈りたい」
これまでのことへのだというのだ。
「是非な。何を贈るべきか」
「御両家は我が家にとって掛け替えのない友であります」
平手が言ってきた。
「さすれば贈るとなれば」
「弾むべきじゃな」
「茶器も多く贈り」
そしてだというのだ。
「刀や絵もでどうでしょうか」
「とにかく弾むか」
「ここで少ないと器を問われます」
その質もだ、そうしたものからも天下人としての器が見られるのだ。天下人は誰からも見られるものなのだ。
だからこそ平手もここでこう信長に言うのだ。
「殿、ここは多くのものをふんだんにです」
「そうじゃな。ではな」
「それでは」
信長も頷く、そしてだった。
信長は贈りものをふんだんに、しかも質のいいものを贈ることにした。その見立ての者はというと。
「利休」
「はい」
利休が名を呼ばれ応える。
「さすればですな」
「茶器の他も頼めるな」
「畏まりました、それでは」
「御主が見ることが出来るのは茶器だけではない」
書や画、そして刀や具足もなのだ。利休はあらゆるものについてかなりの目利きの者であるのだ。信長もそのことを知っていて彼に言ったのだ。
「だから頼むぞ」
「さすれば」
利休は信長の言葉に頷く、こうして見立ての者も定められた。
信長は次の日利休にこう言われた。
「服も贈りたいのですが」
「服をか」
「女ものを」
「市に瀬名殿か」
「そして徳川に嫁いだ五徳様と」
そしてだった。
「市様のお子様達に」
「市はまず男を産んだ」
浅井家の跡取りだ、市はまずその子を産んだのだ。
「そしてまたじゃ」
「ご懐妊ですな」
「二人目じゃ。今度はどっちかのう」
「男のものならあちらも跡継ぎ様に、しかし女ものなら
「そこままか」
「はい、そうされる為にも両方贈るべきです」
「そうか、それではな」
信長は利休のその言葉に頷いた、こうしてだった。
両家に服も贈られることになった、その服を見てだった。
長政は唸りこう共にいる市に述べた。
「これは凄いのう」
「兄上からの贈りものの」
「御主へのな。それにじゃ」
「お腹の中の子の」
腹はま出てはいない。
「その子にも」
「あるわ」
服を贈ってきたというのだ。
「ここまでとはな」
「この水色の服は」
長政は自家の色となっているこの色が信長が贈っている服の色になっていることを見た、そうしてだった。
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