第百二十五話 独眼龍の上洛その十
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「そして東北で戦をすればよい」
「東北はわしのものになる」
負ける気がしなかった、全く。
「御主も進むな」
「無論じゃ、東北どころかな」
天下自体を見ている信長にとってはそれもなのだ。
「一気に進むぞ」
「そうか。ではな」
「雌雄を決するか」
「うむ」
こうしたことを話してそうしてだった。
信長と政宗は別れ政宗は都へと向かった。その彼を見送って信長に柴田がそっと囁いてきた。
「あの、殿」
「先程のことか」
「はい、あの伊達政宗という者ですが」
「無礼だったというのじゃな」
「そう思うのですが」
こう囁いたのである。
「殿はよいと仰いますが」
「jははは、今はな」
「今はでございますか」
「そうじゃ、今はじゃ」
何故よいか、その理由も言う信長だった。
「むしろあれ位はね返っておる者でないとな」
「よくないのですか」
「そうじゃ。御主にしてもじゃ」
信長は柴田に顔を向けて言う。
「己が使えるに相応しくない者に仕えるか」
「それがしの主は織田家であり殿であります」
「そうじゃな」
「はい、そうです」
まさにそうだというのだ。
「殿でなければなりません」
「わしが御主が仕えるに相応しい者でなければどうしておった」
「そうですな。勘十郎様にお仕えしていたかも知れませぬな」
「そうしておったであろうな」
「たまたまご幼少の殿の学問を知ってでしたが」
それまでは信長に不安を感じていたのだ、だが彼の傾いた中での鍛錬と学問を知りそれで仕えることを決意したのだ。
その柴田が今言う。
「いえ、それがないと」
「そうじゃな」
「はい、それがしもやはり」
「そうした意味ではねっ返りじゃ」
彼にしてもだというのだ。
「つまりあの者についてもじゃ」
「家臣にするには」
「そうじゃ、あの者にも言ったがな」
心から従える、つまり心服させるというのだ。
「それまではよい、そしてそうした者をな」
「従わせることが」
「面白い、またあの者と会うのが楽しみじゃ」
「ですか。それでは」
「うむ、あれでよい」
こう言ってそのうえでだった。
信長は城に戻り茶を飲む。その場で今度は滝川に問うた。
「あの者には言わなかったが」
「ご兄弟のことか」
「流石に言うのは憚れたわ」
信長も政宗を気遣ってそうしたのだ。
「ややこしいことじゃ。じゃが」
「伊達家の今後は」
「あの者にはそうした悔いを残さないで欲しいのう」
弟殺し、それをだ。
「源氏にしても足利幕府にしてもな」
「ですな、それは」
「これはあ奴だけが出来ることじゃ」
政宗だけがだというのだ。
「わしがどうとかは出来ぬ」
「こればかりは」
「そうじゃ。だがあの者は間違いなく大きくなる」
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