第百二十五話 独眼龍の上洛その九
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「わしはそれはせぬ」
「心か」
「心服じゃ。人を力で従えさせてもそれは真に従えさせたことにはならぬ」
「ではわしを心からか」
「従わせてやるわ、必ずな」
「わしも同じじゃ。誰であろうが従わせてやる」
政宗もだった、強い声で確かな笑みを浮かべた顔で言う。
「御主もまたな」
「では再び相見えた時に」
「勝負じゃな」
「うむ」
ここまで話して二人は茶を飲む、無論他の者達もだ。
成実は柴田を前にして言った。
「甕割り柴田ですな」
「わしのことを承知は」
「お名前は常々聞いておるわ」
成実は楽しげな笑みを浮かべ茶を手に柴田に言う。
「わしと戦うに相応しい」
「言うのう、わしと競うか」
「うむ、また会った時にはな」
「わしは攻めでは負けぬ」
掛かれ柴田である、この名のままだ。
「誰にもな」
「わしもじゃ。負けぬわ」
「ではどちらが上か」
「その時に競うとするか」
こうした話をした二人だった。
他の面々も茶を飲んでいく、その中で片倉は信長と政宗の顔をそれぞれ見てそのうえで静かにこう言った。
「似ていますな」
「わし等がか」
「はい」
政宗に対しても静かに答える。
「お二人は」
「そうか。では御主はどうする」
「どうするかといいますと」
「わしから離れ織田に入るか」
いささか挑発する様な問いだった、見れば政宗の顔の笑みは今度はやや凄みが入っている感じだ。
「御主ならどの家でもやっていけるがのう」
「お戯れを」
片倉は政宗のその問いに顔色を変えることなく返した。
「その様なことはありませぬ」
「決してか」
「それがしの主は一人です」
「わしだけだというのじゃな」
「そうです。それがしは心服しています」
あえて出した言葉だった。
「殿に」
「それでか」
「左様です、それがしは殿と共にあります」
終生、そうした言葉だった。
「ですから」
「わしもですぞ」
片倉に続いて成実も言う。
「わしの主は殿お一人」
「御主もか」
「無論です、殿以外の誰にも仕えませぬ」
言い切った言葉だった、片倉の言葉と同じく。
「そうさせて頂きます」
「そうか。織田には入らぬか」
「殿と何処までも」
「そのつもりです」
「無理強いはせぬ」
信長は三人を見て言った。
「また言うが心を攻めなければ意味がないからのう」
「そうじゃな。ではまた会おうぞ」
「これからどうするのじゃ?」
「都に上がる」
政宗はこの考えを信長に告げる。
「そして奈良なり堺を見回る」
「そうするか」
「止めぬな」
「存分に見るのじゃな」
やはり止めはしない信長だった。
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