第二幕その七
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兵士達も怒りに満ちていた。そしてエドガルドと彼の兵士達もまた。
剣を抜き今にも戦わんとしていた。
「いいだろう、一人残らずだ」
「血祭にあげてやろうぞ!」
「我等が一人もいなくなろうともだ!」
「戦いの中で果てる!」
こう言って剣を手にして叫ぶ。まさに一触即発だった。
そしてエドガルドは言うのだった。
「邪な心の女に私の死は素晴らしい光景だろう。その亡骸を踏み躙り満面の笑顔で裁断に向かいそこで神の祝福を受けるべきなのだ」
「神よ、どうか」
ルチアも言うのだった。
「お救い下さい、この恐ろしい時に望みを御聞き下さい」
悲しみと苦しみに満ちた顔での言葉だった。天を仰いでいた。
「この世には何の望みもありません。どうかこの限りない悩みの祈りを御聞き下さい。どうか私のこの世で最後の願いをです・
「どうかここは」
「御気を確かに」
ライモンドとアリーサはそのルチアを左右から支えて励ます。
「そしてエドガルド殿、貴方は」
「どうかお逃げになって下さい」
「逃げる必要なぞない!」
しかし彼はそれを聞こうとしない。
「今の私にはもう」
「ですがここはどうか」
「お下がり下さい」
「生きよというのか、私に」
「そうです」
その通りだと彼に告げるライモンドだった。
「ですからここは」
「・・・・・・くっ」
「エンリーコ様」
そして彼にはノルマンノが傍に来て言う。
「宴の場です。ここは」
「収めよというのだな」
「そうです、ですから」
「致し方あるまい」
彼もそれに頷いた。アルトゥーロもだ。
「それではだ」
「はい、それでは」
「全ては永遠の慈悲の前で和らげられます」
ライモンドの言葉だ。
「たった一つの悲しみに対して数限りない喜びが与えられることもまた人の世です」
こう言って双方を下がらせた。エドガルドは己の兵士達を引き連れ忌々しげに広間を去った。ルチアは遂に気を失いアリーサがそれを支える。宴の場は騒乱の坩堝となっていた。
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