第二十九話 神社の巫女その九
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「錬金術っていうのは」
「科学じゃ」
これだというのだ。
「実験もするし薬とかも研究するしのう」
「科学なんですか」
「医学でもある、そもそも科学も医学も昔はそれ程分かれておらんかった」
学問の分化は近代以降のことである、それまでは科学も錬金術も一緒のものだったのだ。
「ついでに言えば魔術や仙術もな」
「けれど違うんですね」
「マリンブルーとコバルトブルー位の違いじゃがな」
色で表現するとこうなった。
「錬金術はそうしたものじゃ」
「科学の方ですか」
「わしはどっちかというとそちらじゃな」
錬金術師、アルケミストだというのだ。
「仙人とはまた違う」
「仙術は使えないですか」
「占星術もな」
占いの方もだというのだ。
「わしは出来ぬぞ」
「知識はあってもですか」
「出来ん、とにかく人間の知識は僅かなもので」
それでだというのだ。
「人間自体が小さなものじゃ」
「そうなんですね」
「うむ、大きな存在は何かというとじゃ」
人間がちっぽけなものならだ、大きなものはというと。
「神仏じゃ」
「神様や仏様がですか」
「大きな存在なんですね」
「この学園の中の神社にも神様はおられるぞ」
神社だからだというのだ。
「ちゃんとな」
「どんな神様ですか?」
「お寺はお不動さんでしたけれど」
「一柱ではない」
博士はこう二人に答える。
「何柱もおられる」
「っていいますと」
「日本の神様は多くてのう」
聖花にこのことを話す、日本の神々は八百万の神々という言葉があるだけあって相当な数が存在しているのだ。
「しかも増え続けておるしな」
「それであの神社もですか」
「恋愛成就に家内安全、学業成就に安産祈願にな」
「それだけ神様がおられるんですね」
「日本武尊も祭っておったか」
日本神話における最大の英雄の一人だ、死して神格化されたのだ。
「他には月読命もな」
「あっ、須佐男命のお兄さんの」
「天照大神は流石に恐れ多いのか祭っておらんかったな」
伊勢神宮の祭神である、言うまでもなく日本の神々で最も位の高い神の一柱とされている。
「確かな」
「流石にそれはですか」
「他には織田信長もか」
「信長さんも神様なんですか」
「祀れば神様になるのじゃ」
日本ではそうなるのだ。
「現に大阪では太閤さんの神社があるじゃろ」
「あれですか」
「うむ、人も祭られれば神様になるのじゃ」
こう二人に話す。
「そういうことじゃ」
「それであの神社の神様ってどれだけ祭られているんですか?」
「確か二十じゃったな」
博士は頭の中で数えてから聖花に答えた。
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