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ソードアート・オンライン 奇妙な壁戦士の物語
第二話 開始早々に迷子です
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「何処やねん。ここは」

 フィールドに出て無我夢中に駆け抜けていたら、いつの間にやら辺りはまったく見知らぬ地形になっていた。

 光が届かない為か周りは暗く、それでも見えるものといえば木、木、木、草、虫、花、そして得体の知れない植物型モンスターが見える。植物型モンスターの名前は《マンイーターJr》。Lv2の見た目は小型(人の3分の1くらいの丈)のハエトリグサなのだが、通常のハエトリグサと違って根っこを足代わりに一人で歩いている所がまず気持ち悪い。その上普通のそれと大きさを比較するとかなり大きいのだから――これはある意味で精神的に追い込まれている気分になる。それをもう既に何百体と倒しているのだから、気分は最悪である。

 この地形を一言で表せば――そう、森である。人食い植物が普通の植物に紛れて闊歩している森に放り込まれるなど、本当に今日は厄日である。誰だ、思い立ったが吉日などと言った奴は。責任者は早く出てきてこの人食い植物の餌食にでもなっとけ。

 などと、くだらない事を考えながら少年は今装備している武具の耐久度と、自身のレベル、そしてHPの状況を確認する。

 背中に差しているレイピアの耐久値は既に三分の一を切っている。その分、この森に入ってからはレベルが7も上がり、既にLv8にまで到達したのだが、武器の耐久力がこれほど減るとは思いにもよらなかったのか、少し苦い表情を浮かべている。HPは、未だにノーダメージ。回復薬は一回も使っていない。

 レベルアップしたときのステータス――この世界での自分の命であるHP(ヒットポイント)、筋力値のSTR(Strength)、敏捷力のAGI(agility)――のレベルアップ時にもらえるステータスポイントの振り分けだが、これは1レベル上がるごとに3ポイント貰う事が出来る。しかし、振り直しをすることは出来ない。だからこそ、このデスゲームにおいて、ステータスポイントの不利間違いは命取りになるといっても過言ではないだろう。

 《スキルスロット》とは、料理、鍛冶、索敵、〜系武器スキル、武器防御スキル、などといったもので、言ってみれば専用のソードスキルを使う為、また便利な効果を得る為に必要な、それらを習得(記録)するためのメモリースティック(またはUSBメモリ)のようなものである。まとめれば、習得可能スキル限度数だ。

 レベルが7も上がったことにより、少年のステータスポイントは計21あったわけだが、少年は敏捷力を完全に無視して、STRに15、HPに6のポイントを振り分けていた。スキルスロットは、最初に何を取るかと迷った挙句、結局は細剣スキルを取る事に決めた。

 そして何故、少年が敏捷力ではなくHPにポイントを振ったのか――それは、今まで敵を一度も近づけず、細剣一本で倒したからである。


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