第三章
小さな教室で彼の心は巻き戻る。
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る。どういう人間としてかは分からない。が、『自分を苦労させた人間』としてだと言うことは察しがつく。
彼女の記憶を形にしたネームプレートには平仮名で俺の名前が書いてある。
……え、何で俺の名前知ってんの? も、もしかして俺のこと好きなのかなー、ドキドキ。――なんて比企谷じゃないから勘違いはしないまでも、今まで何のストレスも感じてなかった俺にはちょっとストレスだ。
人に覚えてもらった感覚がこんなにも煩わしいとは……。
自分は人との関わりが持ちたくない訳ではない。そう思っていたが、どうやら俺はいつの間にやら人嫌いになっていたようだ。
「外したいときは外してもいいよ。ほら、困るときもあるかもだし……」
「困るとき? ああ、そうかい……。雪ノ下、君、由比ヶ浜さんに何かしら吹き込んだね?」
俺はキッ、と雪ノ下を睨み付けた。こんのヤロォ……。俺のたいして勉強しなくても全教科十位以上の頭脳(笑)が瞬時に答えを導く。
シミュレートするとこうだ。
× × ×
雪ノ下「(桐ヶ谷くんが覚えてもらえない。これは彼の勝手な行動を許し、下手をすると学校全体が混乱に陥る可能性もある、危険)とりあえず平塚先生に連絡ね。彼の更正を真っ先に行う必要があるもの」
平塚先生「なにぃ! やはりあいつはそんな能力を隠していたか……。ふっ、最初から気づいていたさ。あの飄々とした態度、濁ったようで怪しさを持った目『平塚先生』……っは!」
雪ノ下「とにかく桐ヶ谷くんの更正を『桐ヶ谷? そんな生徒はいないぞ?』……え?」
平塚先生「つまり我々も名前を知らなかった訳だ。そうだ、同類のニオイがする比企谷に奴の情報を聞こう」
prrrrrr――。(呼び出し音)
比企谷「もしもし、平塚先生ですか。ええ、桐――何とか君のことですか? そう言えば、由比ヶ浜はあいつの名前呼んでましたけど?」
平塚「そうか、ありがとう。では、切るぞ。……ふぅ、由比ヶ浜の家は……っと」
由比ヶ浜「あれ、平塚先生? あ、桐山くんの事ですか? は、はいそうですか。……桐山くん、名前を覚えてもらえないのが嫌だったんだ。わかりました、はい!」
× × ×
そして、俺と公園で会った、と。雪ノ下は差し詰め、由比ヶ浜にさんに『実は彼、自分の名前を覚えてもらえず、落ち込んでいるらしいの』とか何とか。いや、ただの憶測だけど……。
「何で俺のためにそんなこと……ああ、奉仕部の依頼か。律儀だね……」
「それもあるけど……、桐山くんのこと、信じたかったから!」
「信じる?」
信じるってなんだっけ? えーっと、宗教とか? 違う。俺が分か
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