第三章
小さな教室で彼の心は巻き戻る。
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もう探さなくてもいいから。何なら鼻血くらい流しっぱなしでいいから……。
いや、深く考えるのはやめよう。どうやら汚れてしまった床のため、という可能性が浮上してきた。
「あ、う……でも、ちょっと待って! ハンカチならあったから!」
「……え?」
驚く俺をよそに彼女の取り出したるは一枚のハンケチーフ。
それには洒落た柄が入っており、いかにも『女子』って感じだ。どれだけ女子っぽいか分かりやすく説明すると、比企谷がそれを持っていたのを皆が知ったら瞬く間にクラス中で、比企谷はホモ or ゲイ……と噂されるレベル。それどころか材木座産 材木豚 には普段、ほむぅ……と、言うところ、ホモォ……とニヤつきながら言われ、俺の人生オワタ! まである。
それくらい女の子っぽい。なんかこの話の後だと聞こえが悪いが……。
ただ、単純に由比ヶ浜さんのハンカチを俺の鼻血で汚すのは、あまりにも忍びない。そして後ろめたい。困った顔をする由比ヶ浜さんを顔に覆ったハンカチの端から申し訳なさそうな目で見る。そんな俺が目に浮かんだ。俺はそこまでして鼻血を止めたくはない。
「いや、遠慮するよ」
それが俺の結論だ。
鼻血を垂らしながらニコッと笑う俺は、制服の袖で鼻をおさえた。
由比ヶ浜さんはそんな俺を見て、少し呆れたような顔をする。
「でも、どうせ桐山くんも悪かったでしょ? 雪ノ下さんが怒るくらい」
「……へ?」
悪い? 俺が? 何で?
意味 が分からない。自分はすぐに忘れられたから、怒られなかったから罪の意識もない。俺は悪くない。
でも、ようやく気づいた。
――こいつらには忘れられてない。
考えられる限り、最高の最悪だった。
自分を忘れる者に怒りを覚えるくせに、覚えてもらったら罪を被る。最大の矛盾。
今までの自分がこれ以上なく災いした。
つけ入る隙のない完全無双、完璧。そんな何をしても誰にも、そして俺にも否がない『俺』が突然瓦解した。嘘や誤魔化し、出鱈目、そんな何かで塗りたくられた本当はヒビだらけの碧玉を一人の少女に見破られた。それは困る。
「でも俺は、悪くなかったよ?」
「もう違うよ? 桐山くんのしたこと、私は覚えてるし」
そう言って彼女は例の缶バッジ付きのリュックから、一つのネームプレートを取り出す。大きさは家の表札よりでかい、100円ショップの額縁みたいなやつだ。
――それを俺の首に掛けてきた。
途端、目の前の景色に色がつく。
「……誰?」
「お前、桐山か?」
もう桐里とは呼ばないんだな……。
どうやら理解した。彼女がスーパーに行ったついで、100円ショップで購入したこの首輪はきっと彼女の中では鮮明な記憶として残っている。つまり、今、俺は認知されてい
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