暁 〜小説投稿サイト〜
やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。
第三章
小さな教室で彼の心は巻き戻る。
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「へぇ、じゃあどこがいいの? ちゃんと私が連れて行ってあげる……。どこでも良いわよ、遠慮しないで」
「分かった!」

 しかし、言ってはみたが、結局どこで死のうか。男だったらやはり「遺骨は海にまいておくれ」とか……いや、それは海に迷惑だ。そうだ、雪ノ下に迷惑を掛ける死に方をしよう!

「雪ノ下さん! 俺、雪ノ下さんの腹の上で死にたいな! ほら死体が見つかったときに誤解される……かも?」
「 死 ネ ェ ッ ! 」
 ちょ、雪ノ下さん声怖い。
 そして刹那、雪ノ下の白くて小さい可愛らしいお手手(てて)が、がっしりとしたグーを作って、俺の額を貫いた。ぐほぉあ…っ。

              ×      ×      ×

 数分後、教室のドアがぬるっと……違った。ドアがガラッと開いて、奴がぬるっと現れた。


 言うまでもない。『腐敗型エイリアン』だ。とても目が腐っている。触れると即死。ちなみにバリアーも効きませ―ん!
 と、俺は銃を構えるポーズをとったが、よく見ると比企谷八幡だった。なんだよびびらせやがって。
 俺がエイリアンと勘違いしたその男は、俺の変わらずに果てた姿を見るなり声をあげる。

「お、おい雪ノ下。その足下の肉塊はなんだ?」
「桐里くん、だったものよ……」
 誰が桐里くんだ誰が。桐里くん、いきなり出てきて既に惨殺死体とか、哀れなり。
 それと、俺も大概失礼だが、こいつらも失礼だ。何だよ肉塊って……。

「俺まだ生きてるし、雪ノ下に殴られて鼻血出してるだけで、ぴんぴんしてるんだけど? 何なの? 俺は元気でも肉塊の価値しかないの? お前ら怖いよ!」
「なんだ桐里、死んでたのか」
「おお!? 会話が噛み合っていないぞ! 肉塊ではなくなったけど死んでんじゃん、生きてる俺の価値 死人じゃん。お前ら何なの? 異世界転生でもして価値観狂ったの、ねぇ?」
 俺がわめくと開きっぱなしの戸からひょっこりとナマ足が突き出てくる。
 部室に訪れたのは由比ヶ浜結衣だった。……なぁんだ、結局みんな揃うのかよ。
 
「やっはろー、って桐山くんが地面に這いつくばって……、うえぇっ、血!? ワ、ワ、ワッ! 桐山くんの顔が血だらけだけど?」
 あ、ごめん鼻血……。あと、ワ、ワ、ワッって、あんたはの○太くんかよ。

「由比ヶ浜さん、ごめん。もしよければティッシュをめぐんでくれないかな?」
「あ、うん。ちょっと待ってね……」
 由比ヶ浜さんはスカートのポケットやら缶バッジがびしびし付いたリュックサックの中をがさがさと探し回り、数分して、「ごめんないや」と申し訳なさそうな顔をした。
 
「そっか。ならいいよ。時間をとらせてごめんなさい」
 正直、俺のためにティッシュを探してくれただけで、もう満足です。
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