第三十六話 坂道
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びてしまえと思わないでもないがそれが社会不安の一因になるのは困る。これも頭の痛い問題だ。
だが農奴の存続を認めれば貴族達は間違いなく農奴を増やそうとするだろう。これはこれで貴族と平民の間に新たな衝突を生み出す事になるはずだ。それに農奴と自由民でどちらが生産力が高いかと言われれば間違いなく自由民なのだ。政府としては農奴を無くして自由民を増やす方向で改革を進めなければならない。
やはり農奴は買い取る形で解放するしかないだろうな。そして新たに貴族が平民を農奴として買い取る事を禁止する。そういう形で農奴制を廃止に持って行くしかない。時間がかかるだろう、多くの人間が農奴のまま死んでいく事になる、酷い話だ、溜息が出た……。
「ところでカストロプをどうするつもりだ」
「……」
「財務省の接収が終わったら内政に関しては自分にまかせて欲しいと言っていたが」
考えに耽っていると義父が問い掛けてきた。
「開明派に任せてみようかと考えています」
「大丈夫か? 連中はかなり急進的だが」
義父が顔を顰めている。あいつら評判悪いんだな、改革の必要性を認める人間から見ると急ぎ過ぎている、机上の空論、そう見えるらしい。
「丸投げにはしません。私の管理下で行わせます。カストロプはオーディンから近い、あそこで開明派の統治が上手く行けば貴族達に与える影響は小さくありません。それに刺激を受けて自主的に領内統治を変えていく貴族が現れればと考えています」
「なるほど、ブラウンシュバイク公爵家の統治にも取り入れるか……」
「はい」
義父が頷きながらワインを口に運んだ。俺もジンジャーエールを口に運ぶ。炭酸の気が抜けて妙に甘ったるい飲み物になっていた。ま、嫌いじゃないがな。
急な坂道を自転車でブレーキを掛けながら下りるようなものだな。止まる事も出来ないし戻る事も出来ない。そしてブレーキをかけなければ自転車の制御が出来ず事故を起こすだろう。少しずつ少しずつ降りるしかない。厄介な事だ、また溜息が出た……。
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