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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十六話 坂道
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ます」
「貴族達がそれを受け入れるのは難しかろうな」
大公が憂欝そうな表情をしている。貴族達の反発を思ったのだろう。

「反発は有ると思います。しかしこれはやらなければなりません。直接税を制限した以上、貴族達は賦役でそれを穴埋めしようとするはずです。当然ですが賦役は厳しいものになる。賦役を軽減させ平民達の生命を守るには平民達に控訴権を与え貴族達が恣意によって平民を処罰する事を制限しなくてはならないのです」

控訴は帝国政府に対して行わせる。それによって貴族の領内統治に介入する事が出来るようになる。貴族達は何が嫌だと言っても帝国政府に干渉される事を嫌うはずだ。当然だが干渉を避けようとすれば統治は穏健なものにせざるを得ない。変に隠蔽するなら強権を持って潰す、或いは領地を一部取り上げる……。

善政を布く貴族だけが生き残れるだろう。これまでの生き方から抜けられない貴族は緩やかにそして確実に没落していく事になる。帝国貴族に領地を与えたのは帝国の統治の一部を委任しただけで有り財産として与えたものではないと言う事を理解させねばならない。統治において悪政や不正が有れば領地は没収されるのだと言う事を理解させねば……。溜息が出そうだ。

「それでもこれは平民達に対しての救済でしか有りません。農奴は対象外です」
「農奴か……、どうするつもりだ、切り捨てるのか?」
義父が眉を寄せている。
「色々と考えてはいますが……、先ずは平民を優先させようと思っています」
「そうか……、農奴問題は厄介だぞ。注意せねばならん」
「はい」

農奴問題は厄介と言うのは大袈裟でも無ければ誇張でも無い。こいつの厄介さにはほとほと頭を痛めている。農奴は人間だ、何らかの原因により貴族の所有物になり帝国臣民ではなくなったところにその厄介さが有る。帝国臣民であれば平民であろうと法によって守る事が出来る。しかし農奴は帝国臣民ではない、あくまで所有者である貴族達の私有財産なのだ。

帝国はこれまで農奴を認めてきた、だから貴族達は私財として農奴を集めたのだ。農奴解放と言えば人道の観点からは聞こえは良いだろうが貴族達は私有財産の保護を無視するのかと反発するだろう。政府の政策には一貫性が無い、その所為で自分達が損害を受ける事は納得がいかないと言われればその通りだと言わざるを得ない。どう見ても理は貴族側にある。一つ間違うと改革そのものが否定されかねない。

ブラウンシュバイク公爵家にも農奴はいる。大体三十万人程居るらしい。もちろん帝国貴族の中では最大の保有数だ。彼らはブラウンシュバイク公爵家の重要な労働力になっている。義父の言う『厄介』の中にはそれも入っているだろう。彼らを失った時、それに代わる労働力をどうするのか、ウチだけじゃない、多くの貴族がこの問題に直面するはずだ。貴族など滅
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