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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第三十六話 坂道
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能性が有る……」
「それに対処するためか」
俺が頷くとシェーンコップが唸り声を上げている。

改革はもう始まっている。汚職政治家として評判の悪かったカストロプ公は処断されカストロプ公爵家は廃絶となった。カストロプ公の嫡男、マクシミリアンはカストロプ星系で抵抗しようとしたが討伐軍が接近すると部下達に叛かれ殺された。

ノイケルン宮内尚書、カルテナー侍従次長も御禁制のトラウンシュタイン産バッファローの密猟に関わったとして逮捕されている。処罰はまだ決まっていないが皇帝の財産を盗んだのだ、死罪は免れないだろう。改革の実施、相次ぐ高官の処罰にイゼルローン要塞の兵士達は好意的だ。彼らの殆どが平民、下級貴族だ。安全な場所で不正を働く貴族に対して強い不満を持っている。

「どうだ、シェーンコップ。お前も帝国に仕えんか、帝国はこれから良い方向に動くぞ。ブラウンシュバイク公はお前達を捕虜では無く旗下に迎えたいと言っている」
「……好意は感謝する。しかし、俺達が帝国に仕えれば同盟は俺達が裏切ったと思うだろう。それでは残された仲間達が辛い思いをする事になる」
シェーンコップの言葉にリンツやブルームハルトも沈んだ表情をしている。

どうやら俺が亡命した後、相当に苦労したようだ。あの亡命を後悔してはいない。けっして帝国から歓迎された亡命ではなかったが亡命しなければ同盟で鬱屈したまま腐っていっただろう。亡命を後悔した時も有ったがあの決断が有ったから今の俺がいるのだと思っている。帝国軍大将にまで出世した、信頼できる上司も居る。それだけに目の前で沈んだ表情をしている彼らを見ると内心忸怩たるものが有った……。

「しかしなあ、シェーンコップ。お前達が同盟に義理を通してもあいつらがどう思うか……。残された連中は結局は辛い思いをするかもしれんぞ」
「……」
シェーンコップ達の表情が曇った。

「分かっているだろう、俺達はどんな時でも貧乏籤を引かされた。今回だとて作戦の失敗はお前達が失敗したからだと言い立てるのではないかな。正直にブラウンシュバイク公に作戦を見破られた事を認めると思うか? 俺にはとてもそうは思えん」

そんな苦しそうな顔をするな、シェーンコップ。お前はふてぶてしいくらいの笑顔の方が似合うのだ。
「ブラウンシュバイク公がお前達に好意を持っているのは事実だ。公はなかなか愉快な方だぞ、それは俺が保証する。悪い事は言わん、意地を張らずに公の厚意を受けろ。お前が受けなければお前の部下も受けられんだろう」
「……」
僅かにシェーンコップの表情が動いた、だが無言だった。

「お前達はこれからオーディンに向かう事になる」
「貴様も一緒か」
「いや、俺が戻るのは交代の師団が来てからだ。まああと二週間は先の事だろう、お前達は遅くとも明後日には出発のは
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