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神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第三十五章 日来の女達
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出なんて出来るでしょうか」
 美兎のこの言葉に、この場にいる四人は彼女の方を見た。
 皆の視線が自分へと集まっており、緊張するが今は耐える。
 左人差し指を立てて、思ったことを口にする。
「だってそうじゃないですか。宇天長は四月二日の時、黄森から自身が解放されることを告げられ、それを阻止しようとしたセーラン君を突き放したんですし。それに今日、解放が行われるということは、辰ノ大花側は長を救えなかったことを意味します」
 言ってることは間違いでは無い。
 間違いでは無いからこそ、こうしてはっきりと言えるのだ。
「宇天長の仲間達でも救えなかったのに、他人のセーラン君が救えるんでしょうか。皆がいたときは空気を読んで言いませんでしたが、他人であるセーラン君では救えないと思うんです」
「あんたそれ、本気で言ってんの?」
 灯は顔を向けないまま、真っ直ぐ前を見ながら言う。
 その言葉に対し、迷わずこう返した。
「本気も何もそうじゃないですか。私だって宇天長が救われてほしいと思いますよ。ですけど、それにはやっぱり適格者みたいな人がいると思うんですよ。家族とか親しい人とか」
「そんなことセーランが思わなかったとでも思ったの? ばっかじゃないの」
「馬鹿ってなんですか、馬鹿って。セーラン君は小さい頃、苦しんでたんですよ。帰る場所が無くて、故郷を離れ、たった一人で日来に来た頃。榊先生が臨時保護者になってくれるまで一緒に住んでいたから知ってるんです。幼かった頃のセーラン君を……」
 今でも憶えている、あの時のセーランを。
 今とは違う、感情を表に出さなかったあの頃の彼を。
「日来に来た日から一年は口を開かないで、ただ生きていたんですよ。話しもせず、笑いもせず、遊びもしないで。まだ八歳の子どもが。それから少しずつ口を開くようになったんですけど、そこで初めて言った言葉が――」
 脳裏に浮かぶ、あの時の場面が。
 はっきりと、リアルタイムで流れているように。
『争い合って、皆死んで。どうして人は、それ繰り返すの……?』
 この言葉に両親は驚き、答えを返せなかった。
 八歳の子どもの言葉にしては、それはあまりにも重たい言葉だったからだ。
 きっと一人悩み続けていたのだ。そして、その悩みを人に聞けずにいたのだ。
「だから、出来るなら、もう悲しんでほしくないんです。宇天長が亡くなればきっとセーランは悲しみます。もしかしたらもう二度と、笑わなくなるんじゃないかと思うと、恐いんです」
「あんたってば何時も物事が始まってからぐちぐち言う癖あるから、こっちとしては面倒なのよねえ。それに前と比べて減ったとは言え、感情の上下運動激しいし、面倒な子よ。ほんとに」
 呟くように言ったが、その言葉ははっきりと聞こえた。
 灯の言葉は続き、
「まあ、セーランが
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