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IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐ 
第一章 『学園』 ‐欠片‐
第20話 『正体不明 < Unknown >』 後編
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見せてはいけない』のだ。
手に取ったその写真を見ると彼女はそれを抱きしめて一言だけ呟いた。

「――ごめんなさい」

その言葉にどんな意味が、どんな想いが込められていたのかはわからない。だが少なくともその時の篠ノ之束という人物は辛そうにして、泣いていたのだ。
そう、第三者から見たらきっとその光景は『有り得ない』と思う光景なのだ。天才で、ISの生みの親で、いつも自分勝手で周りなど気にしない、そしてそう振舞いながら周囲を振り回し、いつもヘラヘラと笑っている。

そんな彼女から、世間の目から見た彼女から考えて、誰がこんな辛い表情をしてただ泣いている、まるで『ごく普通の女性』だと思うだろうか。

「『博士』、私が貴女から全てを奪ったから――私が、貴女の大切なものを全て持っていったから、だから、だから今こうなってるの……!?だったら、そうだとしたら全部悪いのはこの私、天才科学者の束さんじゃないか!――私は、束さんは……」

恐らく今の彼女を見たら、彼女を知る多くの人々は『有り得ない』と言うだろう。しかし、そんな姿は誰にも知られることはない。知られてはいけない。
自身がどんな存在なのか、少なくとも篠ノ之束という人間はそれを理解している。自分が『空を、宇宙を目指したい、飛んでみたい』と思って作ったものは今や世間から見たらただの『兵器』だ。
そしてその『兵器』をより『兵器』としていいものにするために、世界は自分を探す、狙う、本当は――こんな現実、望んでいなかった。

自身の最愛の妹には嫌われ、親友である織斑千冬からも昔ほどの関係は持ってもらえず、そしてそんな状況をなんとかしたくても、弁解したくても――何も、できなかった。どうしたらいいか、わからなかった。

だから自分勝手に、きっと相手はそうすれば喜んでくれる、見てくれる、信じてくれると思った事を勝手にやる。篠ノ之束とは、そんな不器用な人物だった。
彼女は少しの時間すすり泣くと、再び隠すようにそのフォトフレームを物が散乱した机の中に埋めた。誰にも見られないように、知られないように隠した。

「あはは、そうだね――束さんらしくないね 自分で決めたじゃないか、もう繰り返さないって、その筈なのに、天才の束さんなのに、何してるんだろうね」

そう誰も居ない部屋で彼女は言うと、すぐにいつも通り、周りを振り回すような、いつもの笑っているような表情に戻る。
湯飲みが置かれたテーブルへと戻り、湯飲みの中の液体を少しだけ啜ると、彼女は別のウインドウを自分の前に呼び出しした。

「そうだよ、もう繰り返さない――もう、束さんの大事なものは失わせない。 他の有象無象なんてどうでもいい、だけど、だけど――『博士』、貴女とした約束だけは、束さんは忘れないし絶対に守って見せるから」

そして、そのウ
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