暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜Cross storys〜
episode of cross:欠片
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ていた。このままではあと数秒で巨人は再び動き出し、今度こそ動けないゲツガとホーク、レンを狙うだろう。

そうなったら、再び防ぎきる自信は今のゲツガにはない。第一、剣の耐久度もとてもじゃないが持たないだろう。ちらりと愛剣を見ると、所々が刃こぼれし始めてていた。損耗耐久度が閾値を越え始めた、何よりの証拠である。

───よぉ、ピンチみたいじゃねぇか。

突然、何の前触れもなく、頭の中で声が響いた。

特に何ということもない普通の声なのに、どこかねっとりと素肌に纏わりついてくるような、生理的に嫌な声である。

───うるさい、こっちは忙しいんだから少し黙ってろ。

素っ気なく頭の中で返すが、その声はしつこく言ってきた。

───力を貸して欲しいんなら、いつでも言いなー。こっちゃあ暇で仕方ねぇんだよ。

───………その暇を発散させた時、お前は何をどうするつもりなんだ?

───さぁなー。その辺はご想像にお任せしようかな?

ふざけるな、そう思った。

ゲツガは必死に体を起こそうとするが、異常なまでの倦怠感が体を包んで体が全く動かない。やっべ、と脳裏で閃くが、体が言うことを聞かない。

そうこうするうちにも、巨人はうっそりと動き出した。

恐らく一番殺傷能力が高そうな、戦斧を大上段に振りかぶる。一瞬の静寂の後、ソレは風を切りながら振り下ろ───

ザシュッッ!!

───されなかった。

凶器が振り下ろされる紙一重前に、萌黄色のコートをはためかせる影が眼前に躍り出て、巨人の体を一息にたたっ斬ったのだ。いきなりの攻撃に巨人は雄叫びを上げ、戦斧が手の中から滑り落ちて音高く地に落下した。

「セモン!」

ゲツガが叫ぶと同時に背後から誰かに抱きかかえられた。頭を巡らすと、シキがレンとゲツガをもう一方の腕に抱えながら居た。

「悪ぃ、遅くなった!その頑張りには悪いが、一回引くぞ!!」

「わかった。レンは!?」

「大丈夫だ。気を失ってはいるが、死んではいない」

シキの腕の中のレンに視線を移す。闇色のマフラーに顔を覆ってはいるが、規則正しい呼吸が聞こえる。

「セモンは何をする気なんだ……?」

「セモンにはしばらくの間、囮になってもらってる!とにかく行くぞ、セモンの頑張りを少しでも短くするためにな!!」

ぐっ、と腕を引く力が強くなり、ゲツガ達は逃走した。

周囲を流れる景色が、みるみる暗くなっていくような気がした。
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