第三幕その六
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第三幕その六
「別にね」
「そんなものですか」
「そんなものだよ。それじゃあ」
「はい」
「飲もう」
こう言ってそのビールを勧めるのだった。
「もう一杯ね」
「わかりました」
「さあ、じゃあ」
牧師だけでなく校長もそれに応える。そうして飲んでいく。
それだけでなかった。ここでまたおかみが来てだった。言うのだった。
「あのですね」
「はい、ビールですね」
「どうも」
「いえいえ、ビールだけじゃないんですよ」
その新しいビールと茹でたソーセージを出しながら話してきたのだった。
「面白い話がありまして」
「面白い話?」
「ほら、ハラシタさんが結婚しますよね」
彼女もこのことを話すのだった。
「その御相手ですけれど」
「テリンカか」
牧師がまた難しい顔になった。
「そのテリンカが一体」
「ハラシタさんはその贈り物にあるものをあげました」
「贈り物?」
「そうなんですよ。襟巻きをですね」
「襟巻きをね」
管理人はそれを聞いて一人納得した顔になった。そうしてそのうえで森の中で彼と話をしたことを思い出したのであった。そうなのだ。
「成程ね」
「その襟巻きですけれどね」
おかみはさらに話す。
「羊のね」
「羊のかい」
「結局それにしたそうですよ」
「いいんじゃないかな、それで」
管理人はそれを聞いて納得した顔になった。
「羊は何度でも刈って取れるしおまけに柔らかくて温かくてね」
「ええ。狐やクロテンも考えたそうですけれどね」
ここで狐の話も出た。
「結局のところは」
「それでなんだね」
「ええ。それで羊です」
そうなのだった。
「けれど私もですよ」
「おかみさんも?」
「新しい襟巻き欲しいですね」
笑いながら言った言葉である。
「この首にね」
「ははは、そんなのは必要ないじゃないか」
校長はこんなことを言った彼女に笑って返した。
「別にね」
「必要ないっていうんですか」
「そうだよ。そんなに太い首をしていて」
その丸々と太った彼女を見ての言葉である。
「そうじゃないかい?寒くないだろ」
「寒いですよ」
そうだというのである。
「私だって」
「寒いのかかい」
「寒いですよ」
また言う彼女だった。
「しっかりとね」
「そうなのか」
「うちの宿六ときたら」
その亭主のことである。
「もうそんなもの一つも贈らないんですよ」
「ははは、そうだろうな」
管理人はおかみのふてくされた言葉を聞いて笑った。
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