Episode14:執行人
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だが。
「あー…それが、はぐれちゃったのよね」
「なるほど。あり得そうだね」
隼人との初対面のときの紅葉を思い出して、揃って苦笑いを漏らす。今頃、本人はくしゃみの一つでもしているだろう。
「じゃ、一緒に行く?」
ひとしきり笑ったあと、隼人がそう言って手を差し出すと、エイミィは笑みを浮かべてその手をとった。
「もちろん!」
そこからはもう、エイミィの独壇場だった。握った手を離さずに、隼人をあちらこちらへと引っ張っていく。そしてやはり女の子とは目移りがしやすいもので、隼人がろくに見れもしないうちに、次々と移動と見学を繰り返す。そしてただでさえ人ごみが苦手な隼人は、そのハイスピードについていくことができずに、開始僅か数10分で軽いグロッキー状態だった。
それでも隼人はなんとか笑みを浮かべて、エイミィについていく。
そう、全ては、彼女の笑顔のためだけに。
激動の部活勧誘の時間も終わり、無線で達也以外帰宅の指示が出されてから、俺は人気のない廊下を歩いていた。ぼーっとして思い出すのは、途中、襲ってきた無頭竜の男のセリフ。確かに彼は、俺の全てを知っていると言っていた。
だがそれは、まやかしだろう。なにせ、消失を始めとして、俺の魔法の完全な理論は俺ですら分かっていないのだから、見ず知らずの男、おそらくはその背後にいる組織にも分かるはずがない。だが、ある程度、例えば俺が暗殺家業をしている、などのことは掴まれているかもしれない。敵は国際的な犯罪組織。相手を消し去ってしまうことはできるだろうが、正体がバレてしまう可能性は極めて高くなる。それは決して褒められたことではない。
ならば、どうするか。
「………行くか」
軽く溜息を吐き出して、覚悟を決める。これから行うのは、常人には罪を課せられる行動。だが、魔法という存在の裏に住む俺には、むしろ許可が降りている行動。逆に、九十九家としては正体の露見こそが罪となってしまう。
人としての罪か、九十九家としての罪か。
そのことについて悩むことは多々あった。けど、俺が彼女を守るにはその方法しかなくて。
だから俺は、『九十九』隼人として生きていく。差し当たってはまず、俺の正体を知っているあの男を殺す。消すのではない。無頭竜への牽制も兼ねて、徹底的に潰す。
そうしている内に、いつの間にか殺気立ってしまっていたのか
「九十九か?」
俺は背後に迫る巨躯の存在に気づくのが遅れてしまった。腹にズンと来るような声を聞いて、慌てて振り返る。するとそこにいたのは、圧倒的な存在感を放つ、俺のよく知る人物だった。
「十文字、先輩」
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