暁 〜小説投稿サイト〜
珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その5
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ば室外にでなくて行ける。こちらの棟はドアの間隔が大きい。ここまで案内してくれた響に聞いたところ、大型の軍艦などが使う部屋らしい。なる程、今まで私が知らなかったわけだ。
 響はここまで案内すると元きた道を戻っていった。私は昨日工廠から帰ってからと今まで、いったい鳳翔さんが何を話したいのかを考えてみてはいた。てんで見当がつかなかった。ならば考えた所で仕方がない。直接赴くだけだ。
 扉を叩く。
「木曾だ。話があると聞いてきたのだが」
 中から返事はない。留守だっただろうか。
 もう一度扉を叩こうと、腕を上げた瞬間、扉は開かれた。
「いらっしゃい、木曾。夜間にごめんなさいね」
「いや、空いてる時間に合わせたのはこっちだ。それで、話があるんじゃないのか?」
「ええ。ちょっと長くなるだろうし、中にどうぞ」
 彼女について部屋の中に入る。後ろで、扉が音を立てて閉まった。
 部屋の中は、確かに私の部屋に比べて大きい。収納スペースが大きめなのは、大型の戦艦や空母の装備を入れておけるためだろう。
 けれど鳳翔さんの部屋に、そのようなものはなかった。勿論戸棚の類を全て開けてみたわけではなく、見た目だけの話だから皆無かはわからない。だが、私が今見る限りそのような類はない。
「適当に座っていて。今、お茶出すわね」
 畳張りのスペースに座布団を置き、私に勧めると、鳳翔さんは台所に向かった。座って、部屋をのんびりと見回した。やはり、武装の類は見当たらない。付け加えて云えば、生活感も乏しい。
「どうぞ」
「ありがとう」
 帰ってきた鳳翔さんが置いた御盆から、茶を頂く。唇にお茶が触れた瞬間に、反射的に茶飲みから口を離した。熱い。しょうがないので、まだ飲まずに盆に戻した。
「早速だけどね、木曾。私は、あなたを説得するために呼んだのよ」
「説得するため?」
 面食らった。話がしたいとは、説得の事だったのか? 一体何を?
「ええ、そう。戦い方を変えてもらうためにね」
「何だ何だ、提督といい響といいあんたといい、それに拘るな」
「ええ、しょうがないわよ。気になってしまうのだもの」
「じゃあ、聞かせてもらおうか、その理由を」
「分かったわ。だから、木曾。ちゃんと聞いてくれると嬉しいわ」
 鳳翔さんは、少し改まった。
「この話はね、ある愚者たちのお話よ」
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