暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第64話 勝利もたらす光輝
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るかのような行為を……。

 その俺の静止に対して、少しその清楚な面差しを離し、やや上目使いに俺の瞳を覗き込む湖の乙女。
 そして、

「頸動脈に直接、水の秘薬を送り込む事に因って、早急に全身の傷の治療を行う」

 彼女の口から、至極もっともな説明が非常に簡潔な形で語られた。その口調は冷静そのもの。
 確かに、身体全体に及ぶ返りの風による傷を治すには、水の秘薬とやらを使用するのが早いとは思います。
 まして、その水の秘薬と言う魔法の薬は、以前に瞳から滂沱の如くあふれ出した、本来は霊障で有るはずの左目からの出血を、いとも容易く治して仕舞った実績も有りますから。

 あの時は目蓋にくちづけを行ったのですが。

 しかし、

「その水の秘薬を送り込む、と言う行為は、首筋。つまり、頸動脈から送り込まなければならないのか?」

 一応、念のためにそう問い掛けてみる俺なのですが……。
 それでも、この問いは無意味ですか。

 そもそも、彼女が必要だと言い、そして、彼女が無意味な事を今まで為した事は有りません。
 つまり、彼女がそれを行うのが必要だから、為そうとしたのでしょう。
 彼女は、より精霊らしい合理的な判断で、それが現在の状況にもっとも相応しいと判断した結果の行動だと思いますから。

 案の定、ゆっくりと首肯く湖の乙女。矢張り、彼女が無駄な事を為す訳は有りませんか。
 それに、確かに頸動脈から送り込む方が、素早く身体全体に送り込む事が出来るとも思いますしね。

 俺は、彼女に対してひとつ首肯いて見せた後、首筋を彼女に見せる事に因って彼女の行為に対する答えとする。
 ただ……。

 彼女のくちびるが首筋に触れた瞬間、何とも言えない感覚が身体の中心に走る。
 そう。このシーンは、どう考えても非常に背徳の色に染まった……。

 蒼き魔性の女神の支配する世界の下、ふたつの影が、その時は完全にひとつと成っていた。


☆★☆★☆


 昨日と今日の狭間の時間。
 遙か上空から、この季節に相応しい冴えた明かりを煌々と投げ掛けて来る女神に一瞬、視線を向けた後、

 湖の乙女を胸に抱き、シルフ(風に舞う乙女)を起動させる俺。
 しかし……。

 しかし、何も起きる雰囲気はなし。

 俺は遙か西の空を見つめた後、軽いため息を吐き出した。その後、懐から一枚のカードを取り出す。
 そうして、

翼ある竜(ワイバーン)

 次善の策として予定していた策を実行する俺。
 但し、ダゴンらしき存在が顕われた事により、この状況は半ば予想していた事実なのですが……。
 それでも、これも仕方がないですか。

 空中に描き出されるワイバーンを指し示す納章。そして、その印に集まる小さき
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