第5章 契約
第64話 勝利もたらす光輝
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地上に落ちた太陽に等しき光は終息し、完全に凪いだ海面。
遙か沖合から吹く風は、高緯度地域の秋に相応しい冷たさを感じさせるが、それでもソレは妖しの気を含む事のない通常の秋風へと戻り……。
しかし!
しかし、突如、俺と湖の乙女の存在する空間の背後に立ち上がる巨大な水柱。
空間自体の爆砕。そして、神に等しきモノの顕現する際に発せられる異常な威圧感。
その水柱から発する神気からは、皮膚の表面にまるで電気が走ったかのような痺れを。
そして、心の底から湧き上がって来るような、そんな潜在的な畏れをもたらせられる。
しかし……。
「問題ない」
俺から意識を切り離し、自らの身体へと精神を戻した少女が、俺の胸の中でそっと呟いた。彼女に相応しい落ち着いた雰囲気と、耳に心地よい声音で。
そして、その次の瞬間。後方より、再び、先ほどと同じような蒼銀の光輝が発せられ始めた。
そう。振り返らずとも判る。夜の闇よりも尚昏き存在感を発し続けていた神の内側から、最初、左右に走った断線から光輝が漏れ出し始め――。
そして、其処から徐々に、広がって行く光輝。
闇よりも昏きその内側より発するは、眩いまでの輝き。
少しずつ、少しずつ黒き邪神の身体に広がって行く蜘蛛の巣に似た亀裂。そして、その亀裂に従って漏れ出した光輝が、黒い巨大な身体中に支配領域を広げて行き……。
そして……。
さらさらと。さらさらと光輝の粒と成って海へと、そして大気中へと散じて行く水の邪神。
「汝に瑠璃の城にて、自らの主と共に永劫の深き眠りが訪れん事を……」
振り返る事もなく発せられた俺の祈りの言葉が届いた瞬間。
異界の瑠璃の城に封じたヤツの主のように……。
魔界の湖深くに鎮めたヤツの息子のように……。
最後の微かな光輝を残して、水の邪神は現実界より、その姿を消し去っていたのでした。
☆★☆★☆
霧が払われ、スヴェルの夜に相応しい蒼に染まったブレストの街に着陸し、一息吐く俺。
その瞬間……。
大地へと降り立った瞬間、俺の左腕から解放された少女が俺の姿を一瞥。
そして、その名工の手による精緻な造りの眉を僅かに顰め、白一色から、凄惨な色が転々と浮かぶ事と成った海軍服の詰襟を開き、胸元のボタンを手早く外した後に……。
しかし――――
「待った、何をしているんや?」
首筋に近付いて来るその色素の薄いくちびるを、言葉と、右手の人差し指で押し止める俺。
そう。今の彼女……湖の乙女の行動は、どう見ても俺の首筋にキスマークを付けようとしているようにしか思えませんから。
もしくは、彼女自身が、俺の首筋に血の刻印を刻もうとしている古き血の一族の末裔で有
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