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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第64話 勝利もたらす光輝
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 いぃぃやぁあぁぁぎゃぃやぉぉううぅ〜。


 霧に沈んだ街に、異世界の歌が聞こえて来る。
 声に成らない声。いや、人間の声帯では本来発声する事の出来ない音の羅列。

 地上から俺たちを見上げる死んだ魚のような瞳。その瞳が妖しい光を浮かべる度に、何処からともなく聞こえて来る異世界の歌声。
 そして、その異様なハーモニーが強く聞こえて来る度に、容易く現実の(ことわり)が砕かれ、世界の歪みが更に大きなモノへと変わって行く違和感に、自らの足元さえ覚束なくなるような異常な感覚に囚われる。

 そう。その一瞬一瞬に、俺たちの周りから通常の世界を支配する理が失われて行き、何か別の物……闇ですらないナニカが、世界を、あらゆるモノを塗り込めて行くかのようで有った。
 間違いない。これは世界を引き裂く歌声。

 間に合うのか?

 我知らず緊張感に身体を強張らせながらも、自らと、そして自らの腕の中から解放された紫の少女を空中の一点へと固定した後、彼女の端整な横顔を見つめた。
 しかし……。
 世界そのものが引き裂かれて行くかのような異界の歌声に乱された心が、その少女の横顔を見つめた瞬間に、術を行使する際に必要な精神状態に成って行くのが判る。

 現在。炎の精霊サラマンダーと、魔将ハルファスを現界させてからは、地水火風に属する魔法に因る攻撃は一切、行われなく成って居ます。
 但し、代わりに激しく成る物理魔法(コモンマジック)と、大弓。更に、マスケット銃に因る射撃。

 そして、その攻撃を遮るかのように、俺たちの周辺に発生する空間の歪み。

 そうだ。その歪んで見える空間こそが、俺たちの周辺の精霊が活性化している証。俺と湖の乙女の周囲では、炎の精霊たちが歓喜の歌声を響かせ、風の精霊たちが軽やかなステップを踏み、水の精霊たちが輪舞を繰り広げる。
 正に、精霊たちの王国がここに築き上げられていたのだ。

 マスケット銃の一斉射撃が水の精霊に弾かれ、大弓の放った矢が、風によって在らぬ方向へと逸らされて仕舞う。
 現状はまったく問題無し。例え、それが人間の限界を容易く超えた攻撃で有ったとしても、逆に言えば、それは所詮人間の限界。
 そして、俺の式神たちは、その限界の向こう側に居る存在。境界線の向こう側に暮らす、異世界の生命体たち。

 敵……操られた人々の攻撃に関しては大丈夫。このまま危険な邪神が顕われない限り、操られている人たちを解放してやれば、次の行動。急に出航したガリア両用艦隊の状況を探る事も可能と成ります。
 そう。危険な何モノかが顕われる前になら……。

 俺の顔を見つめてから、微かに首肯く湖の乙女。これは、彼女の方の準備と覚悟が完了した事を意味する首肯き。
 異世界からの侵略に晒された世界で、俺の|精神
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