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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十六話「過激なこの世界」
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ムに入りたいの?」


 ――その聞き方はダメだろう……。


 案の定とでもいうべきか、プライドの高いリンスレットは毛先を弄っていた指をピタッと止めた。


「――ふっ、なにを言うかと思えば」


 胸を大きく張ると、クレアとは真逆の豊かな母性がプルンと揺れた。……つい目がいってしまうのは男の性だと思う。


「あなたこそ、わたくしのチームに入りたいのでしょう?」


「……は?」


 なに言ってんのコイツ? クレアの目がそう語っている。……エストはいつの間にか船を漕いでいた。


 エストの頭を倒し、膝の上に乗せる。丁度膝枕の形を取り、柔らかな銀髪をそっと撫でた。


 穏やかな風が肌を優しくくすぐるなか、二人のお嬢様の主張(言い合い)はどんどんエスカレートしていく。


「あんたがあたしのチームに入りたいんでしょ!」


「あなたがわたくしのチームに入りたいのでしょう!?」


 ――ああ、今日は良い天気だな。


 遠い目で燦々と輝く日差しを手で遮る。まさに、現実逃避という名の仮想世界に浸かっていた。


 キャロルはキャロルで、お嬢様方の喧嘩を楽しそうに見学しているし。


 ――この二人でチームは無理かもしれん……。


 早くも挫折に心が挫けそうになっていたその時、


「――君たちはいつも争ってばかりだな。もう少し静かにできないのか。ここは公共の場だぞ!」


 まさに救世主のような声が、その場に響いた。


 サロン・カフェに響く凛とした声。


 カフェの入り口から軽甲冑を身に付けた一人の女生徒がやってきた。


「エリス……!」


 呻くようにその名を呟いたクレア。また邪魔なのが来たとでも言うような顔だ。


 エリス・ファーレンガルト。武門で有名なファーレンガルト家の御息女であり、学院内の治安を預かる風王騎士団の団長でもある。


 以前、俺たちは彼女といざこざを起こした経緯がある。すでにその件は相互に遺恨のない形で片付いているが、クレアにとってはなにかと注意してくる彼女に苦手意識があるのだろう。


 少々、真面目すぎるエリスだが、その一本芯が通った姿勢は俺も好ましく思える。騎士として将来大成することだろう。


「あら、騎士団長様じゃありませんか」


「何の用よ。また決闘でもしに来たわけ?」


 剣呑な光を帯びたクレアたちは敵意も露わに訪問者を睨みつける。


 エリスも気に中てられたのか、腰に下げた剣の柄に手を掛けた。


「ふん、私は今この場で決着をつけてもいいぞ?」


「言ってくれるじゃない」


 今にも契約精霊を召喚しそ
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