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ソードアート・オンライン 奇妙な壁戦士の物語
第一話 正式サービス開始宣言
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とする。背中から大音量と震動が伝わってくるが、今は放っておくのが吉だ。関わったとしても、状況は何も変わらない上に、そもそも自分の目的は別にあるのだ。

 MMO(大規模多人数型オンラインの略)は初めての経験だが、五体を動かして敵を倒すのには慣れている。生死を懸けた戦いに挑んだことはないが、それに近しい経験ならばある。

 大丈夫だ、今までやったことと変わりはない。自分にそう言い聞かせながらフィールドを出る途中、もう一度町の方に振り返る。

 するとそこには、驚くべきことに二人の人影があった。一人はそのまま町に戻って行ったが、もう一人はフィールドを颯爽と駆け抜けている。止まる事無く、青白い光の軌跡を描いてモンスターを倒している。

 容姿は――良く分からないが、とりあえず黒髪の片手剣使いということは分かった。観察の任務の初日にこれほどの収穫を得られるなど、思い立ったが吉日というのは案外的を射ているのかもしれない。

「さて、僕も頑張りまっか!」

 そう言って駆け出すと、体は羽のように軽かった。どうやら、何らかのトリガーを引いたことにより――恐らくチュートリアルが終わったことにより、あの男が身体能力全引継ぎの全てを終わらせたのだろう。

 ――これならば、十全に戦える。

 ――きっと何処までだって、例え100層にいっても、きっと通じる筈だ。

 確信のような思いを胸に、少年は今走り出す。

 すぐに目の前に狼のようなモンスターがポップ(モンスターがシステムによって出現するという意のオンラインゲーム用語)する。恐らくスライム相当の強さだろうが、ソードスキル(通常ゲームでいう技のこと。SPは消費せず、精神力を要する)なしに初期武器の状態でそれを一瞬で屠るのは普通であれば不可能だろう。

 しかし、彼は普通ではなかった。

「遅すぎやで!」

 狼がこちらに飛び掛かる刹那、背負っていたレイピアを抜刀し、そして通り過ぎる。傍から見れば、ただすれ違っただけのように見えるだろうが――それは間違いだ。

 今のすれ違う一瞬で、彼は狼に4連撃もの攻撃を与えていた。しかも、全て刺突による攻撃のみである。

 ソードスキルは、当然のことながら使っていない。そもそも、彼は今の状態では使えるソードスキルが皆無なのだ。モンスターを倒すには、こうやって通常攻撃で倒す方法しか考えられなかった。

 神速の4連撃は、あっさりと狼のHPをゼロにしたためか、瞬く間にポリゴン片となって砕け散る。モンスターの名前はおろか、レベルもHPゲージ(HPが帯状に表示されている部分)も見ていなかったが、倒せたのならばそれでいい。

 今はただ、自分の為だけに前に進むことを考えればいいのだ。

「次や! 次いくでぇ!」

 こうして、
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