暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 奇妙な壁戦士の物語
第一話 正式サービス開始宣言
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髪の表情の読めない糸目の少年の顔は既に存在せず、今はハッキリと開いた栗色の双眸に、目と同じ色のさんばら髪。風貌からして、歳設定は恐らく高校生程度だろう。いつもより少し――というかかなり、その顔は大人びて見える。

 それを自分自身だと認識するのに、少年は鏡に映っている自分の動きを見るという作業を要した。だが、それは確かにアバターだった。自分の者でない風貌が、それを表している。

 何かのシステムエラーで、アバターが機能しなかったのだろうか? などと思っていると、周りもその容姿を変えて――御世辞にも、良い出来のアバターとはいえないものばかり。まださっきの姿の方が良かったくらいの完成度である。

 こういったゲームで、アバターの容姿はかなり重要視されるはずなのだが――SAOのプレイヤーは皆が皆それを気にしないのだろうか?

 そんなくだらないことを考えていると、茅場明彦の厳かとすら言える声が降り注いだ。

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は――SAO及びナーヴギア開発者の茅場明彦はこんなことをしたのか? これは大規模なテロなのか? あるいは身代金目的の誘拐事件なのか? と』

 そこで初めて、今まで感情をうかがわせなかった茅場明彦のその声に感情のようなものが感じられた。

『私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。何故なら・・・・・・この状況こそが、私にとっての最終目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためのみに私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた』

 茅場の感情のようなものがみられたのは、そこまでだった。次の言葉では既に、先ほどまでの無機質さを取り戻していた。

『・・・・・・以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の――健闘を祈る』

 最後の一言がどうにも耳に残り、そして消える。真紅の巨大なローブ姿も、世界を包み込んでいた真紅のパターンも静かに消失していく。

 広場に風が吹き抜ける。NPC(ノンプレイヤー・キャラクター)の楽団が演奏する音楽がまともに聞こえる程に、広場は一時の沈黙が支配していた。

 しかし、それも一時だ。この後のことは正常な思考を持っていれば誰であれ分かる。

 少年はすぐに耳を塞ぎながら広場を立ち去る。此処にいるだけでは時間の無駄。説明は既に十分に受けていたので、頭は今も尚正常な思考をすることが出来る。

 恐らくだが、回復アイテムもこの最初のエリアでは必要ないだろう。むしろ必要があるようであれば、身体能力の引き継ぎなど初めからしなければ良かったと後悔することになる。

 だからこそ、彼はすぐに広場から飛び出してフィールドに出よう
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